岡田純良帝國小倉日記

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魂を売り渡した男・島尾敏雄と奄美諸島(撥)
1月10日
魂を売り渡した男・島尾敏雄と奄美諸島(撥)
 「狂うひと」を読んでみて、あらいざらい暴かれているわけだが、これまでは南洋文学の代表作として楽しんできた読者としては、それだけでは済ませられない気分にもなった。やっぱり加計呂麻で島尾夫婦や奄美の島社会の作り上げた虚構の本体を見たいと想った。
 そして――実際に足を運んでみると、明らかに作家の虚構が透けて見えるようだった。
 奄美大島一の都市・名瀬にある鹿児島県立奄美図書館。ここの1階には立派な「島尾敏雄記念室」がある。「昭和文学の極北」とか「巨星落ちる」とか、島尾に絡む形容詞はモノスゴイ表現があって驚いてしまう。

奄美ツアー 20180812 (島尾敏雄旧邸2).jpg

 また、徒歩51歩と島尾自身が書いた勤務先の元県立奄美図書館と図書館長家族用の官舎。これが半世紀以上前に建てられたとは思えないほど立派な鉄筋コンクリート造りの建物で、島尾一家が今から半世紀前に10年程居住していたことに、ある種の感慨が呼び起された。
 さらに海上タクシーで渡った加計呂麻島でも至る所に2人に関する発見があった。
 県道や町道での島尾敏雄関係の行先案内板の大きさ。巨大な道路標識として高々県道に掲げられている。加計呂麻島のような離島でも異様な大きさだから、震洋特攻隊のあった基地までは迷いようがない。
 その一方で、ミホが代用教員をやっていた押角小学校・中学校にはそういう標識はない。ミホの家のあった押角集落と特攻隊の基地との距離感。直線距離は600mといった所だが、間に大きな岬があり、峠で遮られている。その峠は今やトンネルが開削されて車で簡単に抜けられるが、戦中は浜辺には簡単には近付けなかったはずだ。
 ミホは峠道を超えて通ってくる敏雄との逢瀬のために養父を家から遠ざけ、自分の家で睦み合ったようだ。この時彼女は25歳。戦前なら、世の中では“行かず後家”と言われた年代になる。ここを理解しないと2人のその後の関係は理解できないかも知れない。

奄美ツアー 20180815 (震洋特攻隊格納庫前で).jpg

 巫女の家に生まれ育ったと自ら吹聴した島尾ミホ(1919-2007年)の素顔はどんなものか。
 長田という、これも巫女の一族に生まれたミホは、幼い時に生母を失った。実父は姉の嫁ぎ先で、これも巫女の家である大平家に預けたので、ミホの旧姓は大平であった。
 加計呂麻島の尋常小学校を卒業すると、女学校入学前に実父を頼って兄と共に上京し、秋葉原で父親が経営していた大衆食堂の2階で暮らしていた時期があった。これもまた、梯久美子が調べるまで、公には伏せられていた話である。
 この時、父親の経営する食堂にはいやいや寝泊まりさせられて、大平家から送金されたかなりの金額を親に使い込まれた。それでも自動車の運転教習に通ったり、映画を観たり、活発に活動していたが、それは後年の巫女然とした佇まいとは重なってこない。

奄美ツアー 20180812 (島尾敏雄旧邸3).jpg

 外せないのは、ミホには許婚がいたことだ。許嫁は従兄の長田俊一という男性だという。召集直前の昭和13年(1938年)には朝鮮の釜山まで俊一に会いに行っている。
 だが、俊一から
 「適当な人がいたら、その人と一緒になるように」
 と言われたため、結婚はそれ限りとなった。つまり、彼女は許嫁にふられたのである。
 前後関係は分からないのだが、俊一側にはよほどの事情があったのではないか。幸い、戦死はせず、戦後は佐世保に暮らしていたという俊一に今はもう話を聞くことはできない。


追記
昨日は密談中に約束無しである人が俺を訪ねてきた。たまたま寄ったので、という話だったのだが、わざわざ虎屋の羊羹まで持ってきていたのだ。5分でも相手をしていてくれと言っておいた若者が代理で応対をして呉れたのだが、とっとと帰ってしまった。慌てて飛んで返したのだが、姿も形も見えず。
昔から素っ頓狂な白河の人だったのだが、還暦も過ぎて、何やら俺に言いたいことがあったのだろうか。分からないことだが、新年の挨拶にしては不思議なこともあるものだ。よもや引退の挨拶かとも想う。21世紀にもなって古風なことをする人もあるもので、とり急いでおっつけのメールを出しておいたのだが、まだ、尻の辺りがむずむずする。
さてはて。
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