岡田純良帝國小倉日記

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魂を売り渡した男・島尾敏雄と奄美諸島(陸)
1月8日
魂を売り渡した男・島尾敏雄と奄美諸島(陸)
 「死の刺」では島尾敏雄(1917-86年)浮気相手は明かされないのだが、下北沢の洋館の離れに1人で暮らしていた人妻で、島尾よりも3歳年上の作家志望であったそうだ。夫は映画雑誌を出版する出版社を経営していた。彼女は当時40歳。安倍公房(1924-2013年)の「現代の会」に属していて、そこで島尾と知り合ったらしい。

奄美ツアー 20180811 (奄美大島上空のゲリラ豪雨風の小積乱雲).jpg

 「死の刺」にある通り、「あいつ」は島尾夫妻から暴言を浴び、殴られる。散々な目に遭うのだが、その後、逗子に娘と共に隠棲していたが、1975年頃にどうやら自殺したようだ。島尾家は、彼女の死後、茅ヶ崎に居住した時期がある。ミホは、後になっても「あいつ」の居所を度々周辺の人間に聞いている。彼女が自殺した時期と島尾家の茅ヶ崎への移転には何か島尾家側の意図があったのではないかという疑いが消しようが無い。 

奄美ツアー 20180812 (島尾敏雄旧邸1).jpg

 島尾一家が神戸・六甲のアパートを畳んで上京したのは1952年(昭和27年)で、同年の暮れには久坂葉子(1931-52年)が六甲駅で自殺を遂げている。久坂葉子は富士正晴の(1913-87年)の「VIKING」に島尾敏雄によって紹介されている。
 久坂と島尾との間に男女の関係があったと推論する説も世にあるのだが、久坂の自殺の真相はもう分からないので、島尾との恋愛関係の破綻が原因であったのかの断定は難しい。しかし、島尾の周辺にはある時代までは女の影がちらつくので、その線もあり得るだろう。
 加計呂麻島で震洋特攻隊の隊長として指揮を執っていた時期には、部下のため慰安所の建設も考えていたそうで、ミホと初めて肌を交えた時には、ミホに梅毒を感染させている。作家として世に出てから、キリスト者としての一面に光が当たるが、ミホは夫の若い頃に吐いた言葉を書き取っていた。
 「……僕が苦しむ時はお前だって苦しむのは当り前だ、『カサイゼンゾウ』だって、『カムライソタ』だって、みんな芸術のためには戦場にしたんだ。芸術をするものは安楽になんて暮せないんだ。岩の上でも、地獄の果てまでも、お前と子供は僕と一緒なんだ、芸術の女神はしっと深いからね」
 伸三とマホの使ったランドセルはまだ分かるが、夫が自転車に乗って川に落ち、重傷を負った時に着ていたジャンパーも泥付きのまま取ってあり、全ての書き付けのあるメモが保管され、箱に入れられて残っていたそうだ。
 段ボールにして1千箱という膨大な量の資料と格闘した梯久美子(1961年-)は、奥の深い、面白い仕事をして呉れたものだと想う。ニッポンの私小説のドブさらいをやってくれた。

奄美ツアー 20180811 (笠利湾から赤尾木を遠望).jpg

 島尾敏雄という作家が、家族を抱えて、貧困のどん底で喘いだ葛西善蔵(1887-1928年)や嘉村磯多(1897-1933年)らの人や作品を目指していたことで、この人がミホと共に生涯をかけて作り上げた虚構のからくりがこれでハッキリと照らし出された気がするわけである。
 島尾敏雄はミューズではなく、悪魔に魂を売り渡したのである。特攻隊長は慕ってくるミホを毎晩のように抱き、梅毒を感染し、久坂葉子の心を切り刻み、さらにはミホと手を携えて、夫婦で「あいつ」と呼んだ女性に暴行した。
 「あいつ」を露悪的に書いて自分を世の中に売り込んだ。そういう作家は昔からいたが、夫婦共作だからタチが悪い。面白いと感じる人もいるだろうけれど、俺は気分が悪くなる。
 そして奄美を擁する鹿児島県政は、その「特攻帰りの元隊長と聖女」のイメージを巧みに奄美の離島振興策として利活用し続けてきたというわけである。この辺りは、奄美諸島に行って、実際に目にしてみると、そのからくりがじわじわと肌身に伝わってくる。


追記
並行して複数の案件が走っていて、どこからどうきっかけができるか分からない状況だけど、だから面白いのだが、その面白さは中々伝わらない。伝わらないのがカッタルイけど、伝えないと繋がらない。そういうもので30年かな。そういうもんだ。本日は昼の日中からかなりタッチーな密談。
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