岡田純良帝國小倉日記

<< 紅鼻子豬腳專賣――男を蕩かす小椀。 | main | 山本平頭是意味極道刈於台湾。 >>
魂を売り渡した男・島尾敏雄と奄美諸島(吾)
1月7日
魂を売り渡した男・島尾敏雄と奄美諸島(吾)
 帰京後、「私の文学遍歴」[島尾敏雄著, 未来社]を読み直してみると、それまでと全く別の箇所で立ち止まることになったのもそんな想いからだ。
 奄美大島本島第一の繁華街、名瀬。
 名瀬は島尾敏雄(1917-86年)が小岩から家族を引きまとめ、長く暮らした官舎や勤務先の図書館の跡の公民館があった。また、島尾の生涯を丹念に辿った、「島尾敏雄記念室」まで鹿児島県立図書館の中に設置されている。
 洗礼を受けたカソリック教会は市街地のど真ん中にあった。住居から目と鼻の先の坂を下った辺りには、普段行き来のあった牧師のいた洗礼を受けた教会と別の教会があった。さらに図書館に勤務する前に日本史を教えていた大島高校も街中にある。

奄美ツアー 20180811 (奄美大島北端用岬(笠利崎)).jpg

 カソリック教会は方々に見える。しかし寺社仏閣となると、名瀬の街中には浄土真宗の東西以外に目立つ寺は見当たらない。しかもそのお寺はコンクリート造りのビル建築だ。傍目にも有り難味もあったものではない。
 奄美大島全体に寺社が少なく、それでも、旧暦で実施される七夕からお盆の時期には、島内最大手のグリーンストアでもクラゲのように長い金紙銀紙の七夕飾りを売っている。老人の住む古い民家だけでなく、夜の仕事の人たちの多いマンションのベランダからも、長い金紙・銀紙の飾りつけが熱風にゆらゆらとたなびいているのが不思議だった。
 だが名瀬の市街を島尾のゆかりの場所を訪ね歩いただけでは見えて来ないものがあった。
 また、震洋特攻隊を率いて島尾敏雄(1917-86年)の駐屯した加計呂麻島対岸の街、古仁屋。ここも町営の図書館には島尾関係の図書があるそうだが、結局のところなにも分からない。つまり、加計呂麻島まで渡らないと戦記文学のからくりが見えてこない。島尾隊長とミホは特攻隊の隊長と島の代用教員の間柄を超えてしまうのだが――
 ミホは代々巫女の家系の大平家では養女であって、実はその真実は、ミホには永い間の絶対的なタブーで、生きている間は伏せられていたこと。また、愛娘のマヤを、「ちがう、ちがう」としか言わない失語症のままで喪ってしまったことも語られてこなかった。

        島尾夫妻の間で買わされた血判書。.jpg

 その真実の一旦は、息子の伸三の書いた「小高へ 父 島尾敏雄への旅」[島尾伸三著, 河出書房新社]を読むと少し窺えるところがあるだろう。ミホは、夫が女を精神に変調を起して、伸三とマヤの面倒を殆ど見なかった。マヤの下の世話は幼い伸三が見ている。まるで野坂昭如(1930-2015年)の書いた「火垂の墓」の兄妹の姿を地で行くような話だ。
 「狂うひと」で、島尾一家は上京後、小岩で暮し始めたが、書く必然性を見失ったとある。
 (自分は小説を書く必然的な立場が無い)
 (もっと犠牲が必要だ)
 夫はそんな不穏な言葉を書き遺している。これは女との関係を記した日記を妻に盗み読みされる10ヶ月も前のことだ。対するミホは私立探偵を雇って女の素性を調べたり女の家の軒下に潜んだりするが、この行為も「公的に」夫の浮気を知る「前」に行われているのである。

奄美ツアー 20180815 (マリア観音).jpg

 「死の棘」は延々と妻に罵倒され続ける夫の姿が描かれているが、実際に家の中で妻は夫を常に非難し、罵倒し続けていたようだ。今で言うなら陰惨なDVである。
 晩年、夫は、鹿児島市内の自宅の二階に保管していた蔵書を、妻から服を収めたタンスを二階に移すので階下に移せと迫られる。老体に鞭打ち、書籍をガレージを改装した新しい書庫に移す作業を進めていく。その作業中に島尾敏雄は脳梗塞で還らぬ人となるのである。
 ミホは、息子に、「伸三、ごめんね、わたしは、おまえのおとうさんを殺してしまった」と詫びた。しかし今度は娘のマヤを絶対的な支配下に置き、骨と皮にまで痩せ細らせた挙句、失語症のまま喪ってしまう。「死の刺」はあのまま終わったわけではなかったのだ。


追記
描かれるべくしてついに書かれた関係。暴かれてしまうとそんなもんかとも思うけれど、絶対的弱者であった子の心中を考えると、これはもう、本当にいたたまれなくなってくる。
人間関係の中で最も過酷なのは親子関係ではないかとも思うわけで、その内幕を知るにつけて、有り体に言えば筆名と売名のための共犯関係の夫婦なんてのは、三の次くらいになってくる。
そうして久坂葉子なんて女の子が死に至るまでの意識の変遷を想像しても、筆名とか自分の目的ためなら周囲の人間の思惑など気にしない犯罪的な思想性質が彼女に転移したのではないかとさえさえ感じさせるものがあるわねえ。
太宰治以上にヤな感じ。日本的だ。こんな生き方が許されるのは日本だけで、これが世界なら、許されんだろう。
死後であれ糾弾されて評価は改められ、その位置付けは腑分けされ、裁判はやり直しになる。そのくらいのことだと俺は思うけどよ、諸兄姐。つまりユダヤ人によるナチの戦犯問題と同じ性質ということです。これを許すのが日本の最暗部だ。「空気」というもんだわねえ。


追記の追記
さて、CNN報道が新たな極東地政学の安倍ウルトラCか?
週明けのテレーザメイ会談の真意がここなら大したもんだ、⚫⚫大使、あんたは男ぞ。裏をかかれたぜ。
しかし、もしホントにそれがそうとしたら前世紀の日本は盲信して南進したことになる。今後の日本と英国にとって台湾はどうなんだい。岡崎某が草葉の陰で唸っておるで。

香港(CNN)
英国のギャビン・ウィリアムソン国防相は6日までに、同国が欧州連合(EU)から離脱した後、アジアに新たな軍事基地の構築を検討していることを明らかにした。英紙「サンデー・テレグラフ」との会見で述べた。
「英国が国家として第2次世界大戦後に迎える最大の契機」とし、「もう一度、真の国際的なプレーヤーとなる節目。軍は大変重要な役目を担う」と強調した。
新基地の場所として「極東」の可能性に触れたが、同紙の取材に応じた国防筋はシンガポールとブルネイに言及。シンガポールは英国の元植民地で、ブルネイは元保護領。この歴史的経緯に根差し、一定規模の英国軍が今なお駐留する両国は中国など沿岸国・地域の主権争いが長引く南シナ海に臨んでいる(後略)。
| 9本・記録集 | 06:43 | comments(0) | trackbacks(0)
スポンサーサイト
| - | 06:43 | - | -
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://punkhermit.jugem.cc/trackback/7155
トラックバック
CALENDAR
S M T W T F S
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< January 2019 >>
SPONSORED LINKS
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
モバイル
qrcode
LINKS
PROFILE