岡田純良帝國小倉日記

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いちばん偉大な日本の亡命者――オトコたちのからゆき談義。
6月9日(3月23日記す)
いちばん偉大な日本の亡命者――オトコたちのからゆき談義。
 「午後の愉しみ」[開高健著, 文藝春秋]
 開高健(1930-1989年)と武田泰淳(1912-76年)との対談(『歴史と人物』1974年3月号)。武田泰淳のセリフは所々飛躍とキレがあって中々いい。
 「生活にともなう技術という問題がそこにはあるね。そうすると、いちばん偉大な日本の亡命者はからゆきさんだな。あれはすごいね、国家の保護なしにね」
 「日夜、身を挺して。ほんとにすごい」
 「彼女たちは技術を持っていたということですね、性そのものを技術化していたわけでしょう」
 「彼女たちは早くいえば聖女ですね、汚濁の聖女」
 「だから、つまり汚濁じゃないわけだ(笑)」
 「ものすごい生活ですね。とてもおれには勤まりそうにない」

飾り窓@Amsterdam(1).jpg

 「それは男だから、大義名分があるからね。彼女たちは大義名分がなくても、本質的に必要な人物としてどこへ行っても通用できるんだね」
 「いつものことながら、武田さんは問題の引出し方が上手ですね。からゆきさん亡命者説は極限的でいかにも武田さん好みの感性と哲学に従ったテーゼだと思うけれど、いやはや、不意打ちをくらった(笑)」
 「現代でも亡命者になれるのは、画家、バイオリニスト、ピアニスト、それから科学者。頭脳流出とかいわれますが、科学というものは国際的にどこでもやれるわけですからね。だけど、彼女たちはすでにやってきた。日本人が永久に住むべき場所が日本であるという考えはないわけだ。自分自身が日本なんだからね。これはやっぱり強いね。大義名分は抜きにして、黙ってね」
 「むつかしいことは何も言わないでね」
 「インテリの場合は大義名分を言わないと蒸発できない」
 「ヨーロッパにもイタリア人、スペイン人、ギリシヤ人のからゆきさんがいっぱいいますね。薄暗い夜のガード近くの一角だとか、ガラス窓に囲まれた金魚鉢の部屋だとかにね」

飾り窓@Amsterdam(2).jpg

 「ユダヤ人の女は案外貞節なんだね。上海にもユダヤ人の女が亡命してきていてカフェやバーにいましたけれども、なかなか容易には東洋人に肌をゆるさないところがあったように思う。そんな自分たちの血筋を守ってゆこうとするところはすごいよ」
 この後は少し話が拡散してしまうのだが、山崎朋子(1932年-)が「サンダカン八番娼館」で大宅荘一ノンフィクション大賞を受賞したのがその前年。
 「からゆきさん」という言葉が、にわかに流行語となった時期の対談ではあった。小学生だったが、敏感にこの言葉には反応したことを覚えている。売春防止法施行の以前には、例えば黒澤明の「用心棒」では宿場町の親分・河津清三郎の女房・山田五十鈴のこき使う飯炊き女たちが売女であることくらいはガキにでも薄々想像がついた。
 だからあの当時の「可哀想」とか「貧しさゆえに」とかいう社会の温い雰囲気は覚えている。対談する2人は妙な発展段階論だとかに流れない。
 開高はお馴染み、ヨーロッパのからゆきさんなんかを振って見せる。
 そして武田が語った上海の亡命ユダヤ女。
 「なかなか容易には東洋人に肌をゆるさないところがあったように思う」
 太いよなぁ、作家ってのは。実際に口説いても女は落ちなかったということだろうぜ。

追記
言葉とか発想によもやこんなことがと驚かされるような形をポンポン言う人がいて、そういう人はやっぱり共に語るに楽しく、気持ちも明るくなって来る。
グァテマラからの移民の問題はアメリカでも新しい問題になって来た。それでグァテマラのインディオ、インディオのグァテマラ、となっちゃったりするわけね。
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