岡田純良帝國小倉日記

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衣食住足りて――どこへ行く獄中(下)。
6月13日
衣食住足りて――どこへ行く獄中(下)。
 夜は某所で宴会。しかしその店は△△の○○○○と同じかと想ったら、さにあらず。
 「あちらとは全く何も関係が無いです」
 「ええ、俺はあの店に通ったんだよ」
 アタクシは□□人ですと言って女将は胸を張って言った。
 「だから私は△△人が嫌いです」
 店の女将はそう言い放った。
 △△は日本のことではない。彼の地の都市の名前である。
 そして女将は、その昔、武田泰淳(1912-76年)や竹内好(1910-77年)らがさやあてをした幻の上海女の美人画に出てきそうなすごい美人だ。
 それなのに、正真正銘の△△人の代表格の某さんの面前で言ったものだ。
 先日、隣接する某の首相から招かれてかの地へ行ったそうで、20年前の○○と同じだと言った。とうとう、彼らは隣国のことを見聞きして楽しそうに語り合うようになっていた。次々とそういった話が出てその中に我々の姿は見えないようでもあった。
 某さんの目には、時折、暗い炎がチラチラと燃え、俺の顔色を伺いつつ、語り続けた。
 「私がいた頃は北京地下長城がまだ一般公開されていて」
 「そうでしたね」
 「八達嶺まで延びているんだもの」

20180323 (掲載・浙江料理屋の前菜).jpg
 某所で喰った糟鹅(ガチョウ)の前菜。季節ものらしい。丸々湯がいた糟鹅も旨かった。
 ダックの素材が良かっただけで、他のモノは、火を通したり、調味するようなお皿は、
 もう、荒涼とした調味料以外は無味無臭。哀しさと寂寥感を抱いて飯店に戻った。

 「それ、何でしょうか」
 「一九六○年代後半の中ソ国境紛争がきっかけでね」
 「八路軍得意のトンネル作戦で掘りまくった」
 聞いていた若い□□人は地下長城の存在を知らなかった。
 「隠す必要も無いのだけど、過去の冷戦の後をなるべく見せないような配慮です」
 「地下長城の入口のあった前門の賑わいもあの後、完全に一度廃墟になってねぇ」
 見渡す限り廃墟だった。「拆除」(取り壊し)という殴り書きと「你别拆了房子」(取り壊すな)という殴り書きが交互に壁に大書されていた。500年を越える歴史のある△△城外の庶民の下町を打ち壊したため、一時、前門の粉塵が黄砂と共に舞い上がり、大砂塵になって常に巻き上がっていた時期があった。
 「そうでしたね。あれも10年以上前のことですね」
 私は何も知りませんと若い□□人は言った。80年代半ばに生まれた彼女は日本に憧れがあった世代である。
 「また来てね」
 気風のいい女将は嬉しそうに言ったものだ。△△や香港のあの店とは経営者は違うと。見損なわないでという鼻息である。上海女の心意気。こういう世代も出てきているのだ。これは新発見。
 「△△の○○○○よりも、こちらの方がずっと旨い」
 某さんは嬉しそうだ。打包にさせて運転手に配るんだそうだ。某さんと俺がこの街で会う定例会の店は決まり。
 だが――この店でもそうだった。酒に漬けた海老も、大きな蟹も、田鰻も、全て風味が薄かった。食材の風味が落ちている。素材に味がしなかった。養殖なのかどうか知らない。
 昔は日本で釣りを楽しみ、魚をおろした某さん。□□の○○○○を有り難がるとはな。△△で暮らしている内に、すっかり味の無い素材に慣れてしまったのだろうか。つまり、△△の○○○○も味は落ちたのだろう。間違いあるまい。経済発展を遂げて、益々、彼の地は薄っぺらな社会になっていく。
 丁度、高度経済成長期の日本と似ているのかも知れない。さて、文士君と再会するのは何時の日だろうか。P仙の明日はどっちだ。

追記
ずーっと一日中米朝首脳会談で香港中が揺れている感じでしたねえ。昨日は香港は強い雨でしたが、記憶に残る一日になりました。

追記の追記
朝の5時に起きて、これから空港まで。なんでこんなに忙しいのかね。考える時間がないのは本当に詰まらないな。ま、情けないやら悲しいやら。今後もこの調子が続くようなら体調と相談でやんすなあ。ユルユルもでけへんねん。
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