岡田純良帝國小倉日記

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手元にある本――勤労動員世代の食欲(下)。
3月6日
手元にある本――勤労動員世代の食欲(下)。
「ああ好食大論争」[開高健対談集, 潮出版]
 昭和5年生まれというと、想い出す人間は何人かいる。中学時代、学校には、開高健と同年の教師が何人もいた。若い時は共産党員で、教職を取り、教師になったが、熱心な日教組の活動家で、自ら奉ずる共産思想を生徒に押し付け、街頭でビラを配っていた。
 一方、同年でも、実家が商売をやっていて、街の商工会議所の理事をやっているようなボンボンもいて、これまた女の子の内腿をつねるようなエロ教師だった。
 幸いなことに、数年上の教頭が海軍兵学校出身の行動派で、学校全体の行事の時には、この教頭が海軍式の号令をかけるのである。どうやら、日教組とエロ教師に時々カツを入れていたらしいから、我々は昭和5年組に首根っこを押さえられずに済んだ。
 海軍兵学校の場合には敗戦で退学しても、旧制中学への転入資格を担保されていたし、特別扱いだったのが、阿佐田哲也の場合には、学校のシステム自体から放り出された。代表作、「麻雀放浪記」の坊や哲から見る闇市は、この年代にしか見えなかったものだ。

20180113残置書籍の一部.JPG

 1984年に和田誠が映画化した時はキャスティングが俺の周囲でも話題になった。脚本は和田誠と澤井信一郎。主人公の坊や哲が真田広之、ドサ健が鹿賀丈史、女衒の達が加藤健一、上州虎が名古屋章、出目徳が高品格。ワキで天本英世、内藤陳、禿げで篠原勝之。クラブのママ役で加賀まりこ、まゆみ役は大竹しのぶだった。ドサ健は元々松田優作が演じる予定だった。惜しい。
 生年を並べると上州虎の名古屋章は昭和5年、出目徳の高品格は大正8年、鉢巻の天本英世が昭和2年。モノクロ画面に彼らの相貌の影が深く、ワキの顔がほれぼれするほど素晴らしい。彼らこそ、焼跡・闇市を放浪していた世代だという実感が伝わってくる。
 世間の昭和5年組は40代半ば過ぎ。共産党や日教組の綱領みたいなことは吐かないし、生活が苦しくとも、それを生まれのせいにするような甘い連中はいなかった。教師とは何と世間知らずかと中学生でも想った。時代は昭和50年代初頭、ボヤボヤしていると、ボンクラ教師に洗脳されてしまう、そういう時代にニッポンも差し掛かっていたのだ。

   「午後の愉しみ」表紙。.jpg

 ちなみに開高健には「午後の愉しみ 開高健対談集」という対談集もある。これに「駆ける釣る」(団伊玖磨)という対談があるが、後に改題されて本書で「駆ける釣る食べる」として掲載されている。また阿川弘之との対談はこの本では「わが美味礼賛」とあるが、同じく「ああ好食大論争」と改題されている。
 この他、「釣り人語らず」(吉行淳之介)、「アラスカのサケ釣り」(大庭みな子)、「釣り談義浮世問答」(井伏鱒二)、「われら焼け跡闇市派」(野坂昭如)、「ポルノと現代文学」(吉行淳之介)、「『夏の闇』の意味するもの」(佐々木基一)や「『紙の中の戦争』をめぐって」(安岡章太郎)、「亡命者の運命」(武田泰淳)、「戦争文学人間」(大岡昇平)も今読むと懐かしい。
 昭和5年生まれの開高健は昭和6年早生まれの我が伯父と同学年だった。昭和3年組の伯父は陸軍士官学校だった。5年組の伯父は幼児に高熱で片耳が難聴となり、親の期待に応えられず、海兵に進めなかった。
 豊川で敗戦を迎え、旧制中学から新制高校を卒業したが、暫く横浜でブラブラしていた。何をやって暮らしていたのか、少なくともその心境について最期まで俺には語ることは無かった。
 「この俺も還暦まで生きることができそうだよ」
 嬉しそうに言っていたのに、平成3年の2月、還暦直前で枯れ木のようになって死んだ。今頃になって、伯父の言葉を噛み締める。他人様の子に道を説くなんてとんでもない。世間には裏も表もある。シノギは厳しいものだが、尊く、美しいものだと想うぜ。


追記
夕べオジキを思い出していたら、今日は何時の間にやらこういう話になっていた。懐かしいなあ。オジキは軍人になる道を諦めることになって職業軍人の家でふて腐れたわけで、阿佐田哲也に近かったわけだ。やがて、あっちの道に入りかかって右往左往した挙句に卒業したのは闇市をずずいと行った先にあった立教、しかも英文科だったんだっけ。
昨日は、色々と懐かしい場所で喰ったり呑んだり歩いたり。足掛け6年。今が日本の昭和30〜40年代とするなら、前回歩いた社会と比較すると10年以上も経っているような違いがあるわね。旧市街は前世紀半ばのサハラ地区のブーミングタウンみたい。ギラギラ感が増していてこちらもクラクラっとするぜ。
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