岡田純良帝國小倉日記

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気になる本――人類は理不尽の歴史。
小倉日記’18(第四弾)
2月11日
気になる本――人類は理不尽の歴史。
「忘却の引揚げ史」[下川正晴著, 弦書房]
 本書は副題がついていて、「泉靖一と二日市保養所」とある。著者は毎日新聞の元ソウル支局長。毎日新聞出身だが産経新聞の「正論」でも意見を述べてきた論客だ。
 「一刀両断の歴史観は、右であれ、左であれ、信用しがたい」
 讀賣の「著者来店」で著者本人が述べている。

引揚げ(2)二日市保養所.jpg

 「終戦直後、博多港だけで139万人が引き揚げてきた。その中に満州(現中国東北部)や朝鮮半島で暴行され、心ならずも妊娠した女性がいた。厚生省(当時)などが、中絶を希望する女性に超法規的に手術を施すため、約1年半にわたり開設した施設」
 それが「二日市保養所」である。
 本書に2つ救いがある。堕胎は違法であったが、嬰児を抱えたままで生まれ故郷の土を踏むわけにはいかない未婚女性、あるいは既婚夫人、未亡人らがいただろう。このため、高松宮夫妻が保養所を訪ね、事実上、この保養所の行為を国として支援の姿勢を示した。
 これを国による強制堕胎と取った勢力もあり、一方では朝鮮人による暴行が多かったと曲解する説もある。著者は何れにも立っていない。
 さらに、この悲劇は何も敗戦した日本の旧植民地だけに起きたことではなく、未来永劫、起きる可能性があるという視点で「ベルリン陥落一九四五」[Antony Beevor著, 白水社] などの他の事例も引いていること。(『著者来店』十時武士評、讀賣新聞 / 『今週の本棚』(幸)評、毎日新聞他、多数)

引揚げ(3)舞鶴.jpg

「ネパールの人身売買サバイバーの当事者団体から学ぶ」[田中雅子著, 上智大学出版]
 明治時代前半に横濱で生まれ育った長谷川伸(1884-1963年)。小学校低学年で遊び仲間が人さらいにさらわれてサーカス団で曲芸師をやっているので見に行った話が出てくる。この中で印象的なのは、発見された少年は、バツの悪そうに逃げてしまったことだ。少年は親に売られたことを知っていて、もう戻れないことを知っていたのだ。
 日本でも人身売買は相変わらず起こっていて、被害者が5万人ほどいると言われている。しかしタブーの多い国なので、対策が取られ難いこともあり、人権保護団体のレポートでは日本の評価はそれほど高くない。
 この一方、ネパールは今でもインドの売春宿やサーカスに連れていかれたりする被害が跡を絶たないのに、人権保護団体の評価は高い。犯罪者への厳しい処罰と、被害者へのケア等の対策が講じられているからだという。
 日本でも、少年少女が対象であれば、誘拐よりも親が売り飛ばしたケースが今でもある。ネパールの場合には誘拐も多いのだろう。町田・田んぼ、横浜・野毛、大阪・釜ヶ崎、沖縄・松山。今でも犬も歩けば彼女たちに当る。(作家・翻訳家・明治大教授・旦敬介評、讀賣新聞)

糸満市場ノ雑踏。.jpg
 「糸満売り」という言葉があるが、これも年期奉公で縛られるのだから、人身売買である。
 そういうことはどこでも行われていたということで、人類史に、例外は殆ど、無いわね。

「ある奴隷少女に起こった出来事」[H.A.Jacobs著, 新潮文庫]
 奴隷制の本場、アメリカ。著者Harriet Ann Jacobs(1813-97年)の半生を振り返った手記。1860年初版で、150年以上も前に書かれたが、本人直筆の手紙が出てくるまでは創作と想われていたそうだ。母親が亡くなる6歳まで自分が奴隷であることに気付かなかった。そして12歳で優しかった「女主人」と死別し、13歳で父を喪い、保護者に庇護されていた彼女が、ついに人身売買の対象となり、「ドナドナ」となった。
 昔、New Orleansを訪ね、Johnny “Jambalaya” Percleの味とサウンドを楽しみつつ、プランテーションの親方様の邸宅巡りをしたこと、翌年、Memphisの「Memphis Rock and Soul Museum」でBall and Cainを見て、「1ドル」で取引される黒人の広告でありとあらゆる売り文句を見て気が遠くなったことを想い出す。曰く「若く美男」、「右足悪いが体力あり」、「片目欠損も作業に支障無し」云々かくの如し。(『文庫新書』、讀賣新聞)


追記
日本経済新聞より。名古屋は盛り上がっている。それに引き換え、言い出しっぺの「江戸城」はすっかり先を越されて追いつくこともできなくなった。やられてしもうたわい。

名古屋市予算案 過去最大の1.2兆円 18年度
中部 2018/2/9 14:46日本経済新聞 電子版
名古屋市は9日、2018年度の当初予算案を発表した。一般会計は前年度比3.3%増の1兆2097億円と過去最大になった。保育や清掃工場整備などの経費が膨らんだ。歳出では河村たかし市長肝煎りの名古屋城天守閣の木造復元に向けた詳細設計や木材調達、石垣調査などに34億円を投じるほか、5月の天守閣閉鎖後の催しなどに1億8020万円を計上した。

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