岡田純良帝國小倉日記

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気になる本(漆)――横濱、女衒、掏摸、博徒の蠢くところ。
2月9日
気になる本(漆)――横濱、女衒、掏摸、博徒の蠢くところ。
 「ある市井の徒 越しかたは悲しくもの記録」[長谷川伸著, 中公文庫]
 菅原恒覧は役人を辞めて菅原工務所を設立した時に、強くお雇い外国人の存在を念頭に置き、日本人による鉄道敷設の設計・施行・監理を行える企業を目指していた。同様の悲願を果たそうと設立された企業で、今なお盛業中の組織もあるが、消えた企業も多い。
 後に、旧・丹那トンネルを鹿島と組んで東西から掘り進めて日本人だけで成功させる。東海道、山陰、常磐、房総、日豊、土讃をはじめ、手がけた工区は100以上に及んだ。全国の鉄道網整備を通じて日本中のドカチンに顔が利いたこともあり後に土木協会長に就任した。

       「股旅新八景」表紙.jpg

 そうこうする内に、菅原恒覧の周辺には辻嘉六(1877-1948年)のような人物が出て来る。晩年の辻は、政友会を支えるフィクサーとされた。本来、フィクサーとは国家の機密に関わった人間に相応しい言葉で、辻嘉六がそう呼ばれるにはそれなりの訳があった。
 児玉源太郎(1852-1906)は日露戦争で戦地となった大連市外旅順辺に、先に進出していた辻嘉六ら請負人を密偵に使ったのである。また菅原工務所にも陸軍から密命が降りた。
 「二○三高地がどうしても落ちぬので、トンネルで爆破しようと、菅原工務所に命令がきて、大連の有賀定吉支店長を派遣したが、そのうち陥落したので中止した」
 当時は菅原工務所も大連に店があり、恒覧に、司令部から二○三高地に続くトンネルを爆破せよという内示が降りた。
 ドカチンに密偵をさせるとは、この辺りまでの日本は欧米諸国に負けていない。CIAもMI6でも、アメリカでもイギリスでもグローバル企業がお先棒を担いでいたのだから、この筋は間違っていない。
 ところが敗戦後は、役所には入ってくる情報が格段に少なくなったので判断を間違えることが多い。日本人は役所が「お上」と昔から教えられている。だから上から目線もあり、下から目線も生まれる。俺などはJean-Jacques Rousseau(1712-1758)の「社会契約説」を採る方で、しかも、共産主義が失敗に終わったと分かった今、少なくとも重商主義から逃れられないと想っている。Global化と言うけれど、畢竟Super Mercantilismの形を変えたものに過ぎず、進展は不可逆的に起きるものと考えている。

      池波正太郎.jpg

 少子高齢化の進む日本では官民学の人材流動化を加速させないとヤバイ。明治維新には思い切った人材登用があったから成功した。重要な仕事は勢い優秀なものに集中する。これを当時は許した。
 これが後の元勲となり、様々な弊害を生んだことも確かだが、引き換えて、それまでの士農工商制度を破壊したメリットの方がずっと大きい。だから為政者は辻嘉六のような人間を巧みに使い、情報を集め、敵に先んじることができた。
 辻嘉六は原敬(1856-1921年)にも仕えたが、敗戦後には隠退蔵物資の件で名前が取り沙汰された。こういう話は、本来、機密に属するべきもので、どこの国であれゴロゴロある。時が来れば歴史家が書き起こして、歴史にするものだ。敗戦後の日本では、敗戦教育が徹底したため機密に関わった者を犯罪者と決め付けるようになった。リアリズム抜きの理想論では何れ国を誤ることになる。

追記
体調がいまひとつ悪いけれど、インフルちゃんか知らん。周囲はバッタバッタと倒れているんだけれどねえ。まだ、今日の今朝のこの時点では、持ってます。

追記の追記
吉田健一のご発言、「ばかりこうとりこうばかがある」っての、面白かったねえ。
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