岡田純良帝國小倉日記

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気になる本(陸)――横濱、女衒、掏摸、博徒の蠢くところ。
2月8日
気になる本(陸)――横濱、女衒、掏摸、博徒の蠢くところ。
 「ある市井の徒 越しかたは悲しくもの記録」[長谷川伸著, 中公文庫]
 坊ちゃん育ちで甘やかされた寅之助は、その後何年も請負人の下請けの下請けで辛酸を舐め、家を持てるようになると、継母と次男を呼び寄せて、再び暮らすようになる。
 ところが、新コが飛び込んだ建設の世界は学問の無い新コには図面も書けずどうしても馴染めなかった。文字が読めず、辞書の存在さえ教えてくれる者が周囲には無かった。こういう世界は今でもある。21世紀でも、目に文字の無い人はいる。
 寅之助は土木建設の世界で請負人として立派に身を立てたいと願い、倅たちにも家作を残してやりたいと願うあまり、ヤバイ話も喰らいつく。山師の親方のような連中と組み、渥美半島の埋立て工事に手を出し、拳銃で狙われる事件にも巻き込まれる。

印半纏を着たエドワード8世.jpg

 段々読んでいくと、面白いことが分かる。
 寅之助は請負人の下請けのまた下請けだったから、仕事を選り好みが出来ない。だから、当初は日本中の山奥に入り、ドカチン仕事に精を出す。当時は治山と治水、そして少しずつダム建設などが始まった時期でもある。苦労をしたその場所が、それ以前の時代と違っている。土建の市場が社会の変遷と共に変わって行ったことが読み取れる。
 大伯父の秀造、祖父の新造の時代は、あくまで新生ニッポンのためのインフラ大整備が急務。横濱のような平場の築港だからこそ銀行など金融筋の幹部も現われた。今でも、日本の屋台骨を揺るがしかねない超巨大インフラは、山奥でも離島でも、銀行は頭取が視察したりはするが、そのためにヘリを飛ばしたりする。時代が違う。
 横濱船渠の建設のために、水野組をはじめ請負人たちも陣頭で指揮を執り、インフラのオーナーも、国家か、国家に準ずる岩崎のような半国営企業であったりして、如何にも派手派手しい。
 ところが、その次の時代、次のステージとなると、社会を底から支えるインフラ整備に整備の対象が移り変わって行く。明治の中期と違って、治山・治水・発電所建設など、人の目に付きにくい不便な場所こそドカチンの主戦場となって行く。

「瞼の母」(2).jpg

 菅原通濟(1894-1981年)の父親の恒覧(1859-1940年)も、工科大学土木科(東京帝國大学)を卒業して今の国土交通省に入省した。当初は土木屋としてインフラ整備を目指したが、役人として手がけた鉄道敷設工事でトンネル掘削の方が面白くなり、自ら菅原工務所を設立した。
 菅原工務所の設立の狙いは遠大なもので、お雇い外国人の最新の土木技術と日本伝来の請負人の師弟関係を組み合わせようとしたものだ。当時、招聘されて日本にやって来た多数のお雇い外国人。
 その暴利に胸を痛めた日本人は多数ある。首都圏に近いところでも、山梨の水力発電所辺りには、お雇い外国人の宿舎跡地がある。急峻な傾斜地域に不釣合いな広大な宅地に暮らすガイジンに莫大な給料を払っていた。
 不便な土地に辟易した外国人は絶え難い夏場を乗り切るために、日光や箱根や軽井沢に集まった。だから避暑地に高級ホテルが生まれたのは理由があり、これは、本来日本人向けではなかったわけだ。
 新コの弟子の池波正太郎はホテルニューグランドを横浜の定宿にしたが、元々ホテルは関東大震災の復興事業の中から設立された。新コが歩き回ったのはそれよりずっと前。1899年に条約改正で居留地が撤廃されるまで、居留地にはラシャメンがいて、日本人にご法度のラシャメンを遊び人が命懸けで抱いた時代である。


追記
「Fujio & Makoto 1986 Session」ではホンバンの「Gorilla Do」の5分20秒辺りから間違いなくJの叫び声が入っている。それと、「ビールス・カプセル」の5分39秒前後の指笛だわねえ。あれはJでしょうなぁ。さらに55秒辺りの罵声。あれ、誰?、俺?
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