岡田純良帝國小倉日記

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気になる本(伍)――横濱、女衒、掏摸、博徒の蠢くところ。
2月7日
気になる本(伍)――横濱、女衒、掏摸、博徒の蠢くところ。
 「ある市井の徒 越しかたは悲しくもの記録」[長谷川伸著, 中公文庫]
 新コの女の話である。
 20代の半ばで、新コはラシャメン(外人専門の遊女)の自由廃業を手伝ったことがある。
 その1人で馴染みの「メレーのお隈」と所帯を持とうとしたがお隈は家に居続けることができない。別れることになった。そういうオンナは何時の時代もいるものよ。
 34歳で所帯を持った相手も、芸者の梅八こと松田方子(まさこ)。信州木曽から母と娘で出てきた苦労人だった。堅気ではない。方子には旦那がいたが、別れ話で揉め、新コは匕首を胸に抱いて方子を守るために前の旦那に膝詰め談判をする。
 仲睦まじい暮らしの中で小説で一本立ちを決め、都新聞を辞めて五反田に引っ越した。方子は芸者屋「蔦屋」を始めたが、積年の泥水稼業が災いして世を去った。新コの悲嘆は大きく、大スランプに陥って小説が書けない。ここで新コは脚本に転じていくのである。

      池波正太郎.jpg

 新コはここに素人ゴメンとハッキリと書いているのに、世間はその意味を分からない。
 「幼いときに横浜の銘酒屋の女達と口をきき、それから品川の伎夫や二階廻し(母鴉・やりて)や仲どんやの中に寝起きし、神奈川の神風楼の女達を知ってきたものには、娘の美しさは路傍の草の花か塀越しの枝の花か、そんなものの程度にしか思えません」
 カタギのオンナは自分とは無縁だと硬く思い込んでいる。
 「新コは一代を通じて、堅気の家の娘と恋愛をやったことが一度もない」
 「今になって永い過去のどこを叩いてみても、処女を奪って逃げたことがないので、新コはひそかにそれを喜んでいます、その代り処女を許したものとの間に破綻をみた悲恋というものがない」
 これはこれで哀れだが、そういう泥水の世界の意地は、今でも、ある。
 石工で海老虎と呼ばれていた顔役は新コを養子にすると言って掛け合ったのに、父親が譲らずにそのままになった。海老虎は新コを横浜の遊郭に呼び付け、一晩俺がおごってやると言ったことがある。

「沓掛時次郎」(1).jpg

 「新コは忘れるともなく忘れていたが、女達の躰にかかっている年期だの、証文面に加算されているだけでしかない不見金だの、新玉だの初見世だの、台の物一枚に酒一本のことをいう一枚一本だのと、そんな事が思い出されて、こういう処に居るのが厭でなりませんが、海老虎はじめ女達が、何がいいかと食い物飲み物の許斐を口数多く尋ねてくれるので、それじゃあ花魁衆すみなせんがアマ台を一枚とおしてくださいといったのが、一座を惘れさせたようです」
 「新コは二度目の品川で、陣屋横丁にあった魚角という台屋で、暫く出前持をしていましたから」
 「花魁衆といったのが、海老虎よりも女達にはあッという程の意外さだったのでしょう」
 「新コはアマ台一枚が座敷に出ないうちに帰りました」
 「海老虎は何とそのとき新コをみたのか、その後は、養子にくれといわなくなりました」
 世話になった親方にも甘えることが出来ない。
 誰にもおもねられず、突っ張って突っ張って生きていたわけだろう。博徒にもならず、誰の弟子にも入らず、そもそも、誰にも頭を下げることが出来なかった。
 横浜の泥水の中で生まれ育ち、アウトローの最底辺の中で成長したからか、新聞記者になった20代では横濱の街を遊び歩いても、カタギの女には手を出せない。紅蓮隊の一人武者と呼ばれたこともあり、芸人で言えば隼の七と呼ばれた桂三木助を思い出させる。


追記
昨晩はバシンでチャプった。久々に京都御所隣で生まれ育ったN君。語るべきことは色々あって、考えることは多々あったなぁ。踏ん張りどころだわいねぇ。素人ばかりに玄人が囲まれた時に、ナニをするか。人間も問われとるわいねえ。考えることもあるが、ガマンすることかねえ。だが、あんまりガマンすると、こりゃ、人は死んじまうわい。
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