岡田純良帝國小倉日記

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気になる本(肆)――横濱、女衒、掏摸、博徒の蠢くところ。
2月6日
気になる本(肆)――横濱、女衒、掏摸、博徒の蠢くところ。
 「ある市井の徒 越しかたは悲しくもの記録」[長谷川伸著, 中公文庫]
 横濱の物語かと思いきや、新コの働くのは超大型のインフラ整備事業だ。父親が土建の親方の下締めのような仕事をしていたと書いたが、大型の土木工事の現場には、例えば学歴で言うなら博士から中卒までヘルメット姿で働いている。
 ドックには新コを苛める学士様がいた。だが、新コは年上の職人たちから慰められる。学士様は失恋して荒れていたらしい。慰めてくれた石工には九州からやって来た職人が多かった。北九州の炭鉱の積出港となった若松港・洞海湾の開発、さらに長崎造船所の開港に関係した職人集団だったようだ。
 付き合っていたのは、石屋のところにセメントと石灰と砂を練ったモノを配るトロ屋や石工だった。墓場の吉五郎、五郎嬶などの九州土木組、トロ屋の松五郎などを通じて、幼い新コは“職のつきあい”を学んでいく。
 そして、ここに廣島者が登場する。実は、新コらを使っていたのは呉の大立者で、今の五洋建設の創立者になる水野甚次郎。

「瞼の母」(1).jpg

 「呉の水野甚次郎という、新コのような者にさえ傑物にみえた人とは、このとき別れたのかその前か憶えがない。『道光』というその人の伝記でみると、明治二十八年一月二号船渠の潮留工事下請負で、呉から関東に進出し、翌年十一月川崎造船所の潮留工事を請負い、水野組と初めて名乗りをあげたとなっています」
 海軍工廠の土木を請け負った土木業の男たちが次は横濱のドック建設に現われた。
 「激しい現場の中を、着物に角帯で押通す水野甚次郎なる人物をみたことになる」
 「新コさん人になれ立派な人にというような事をいってくれました。小生意気な新コは、エラクなったらお目にかかる、エラクならなかったら行きあっても逃げる、こんな風なことをいった。これは新コがそのころ、真剣になると必ず出てくる言葉だったのです」
 それでも、ドック完成後、職人は次の現場を探してまた横濱の町から消えて行くのだ。
 「古い馴染ながら好きでない髯の洋服連中も立派だった人達も、現場ズレのした関東のものも、そうでない人達も、丸屋・梅原・六軒掘・三谷・今村と流派がはっきりしている土木の親分や、一本立ちの親分手合いまで残らず、新コの目の前からいなくなりました」
 日本中を流れ歩いて行く男たち。これが土木の世界。職人の世界だ。
 19世紀末、横濱の成長と共に新コの仕事も変わって行く。だからドック完成後に勤めたのが入船町の埋立地測量の手伝い人夫だった。横濱が拡大するに連れて、埋立ては一大事業となって、黄金町、日ノ出町の埋立ては敗戦後も続いた。新コは横濱のインフラの整備事業の移り変わりと共にその勤め先を変えていくのである。

        最晩年の長谷川伸(1963年).jpg

 その後幾星霜。
 「新コより年上で、新コより遥かに大きく世の中に貢献している当主の水野さんは、おやじは昔、勉学中の私に、横浜のドックにいる新コという小僧はすぐれていると、あなたのことを引用してたびたび戒めたと語りもした」
 呉市長を務めた水野甚次郎(1881-1958年)は横濱船渠を歩き回っていた甚次郎の息子だ。先代の水野甚次郎(1858-1928年)は昭和3年に亡くなっていた。新コが晴れて先代甚次郎の墓参を果たしたのは甚次郎が亡くなってずっと後の1939年(昭和14年)のこと。
 当時の水野組では長谷川伸のことは語り継がれていたそうで、これは辺見じゅんの「男たちの大和」に出てくる。


追記
讀賣新聞の平成の50冊の2冊目が辺見じゅんのラーゲリの話でしたわね。しっかり考えようと想っておりまするワイ。水野一家は五洋建設になって、つい、最近も、俺と袖を触れ合った。ウハハハハハハハハ。

追記の追記
俺は良く知らないんだけれど、有賀さつきというアナウンサーが亡くなったそうで、世間は冷たいんだそうだわい。テレビを30年以上も観ておらん俺にはレッツゴー長作の死の方がツライけんど、ニッポンの場合には、テレビ業界の人気者ってのは、末期は淋しいことですわなあ。
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