岡田純良帝國小倉日記

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開高健補遺(番外弐)――預言者・開高健。
1月12日
開高健補遺(番外弐)――預言者・開高健。
 「開高健の文学論」[開高健著, 中公文庫]
 江戸川乱歩を日本のミステリーの「芭蕉」とするなら、ミステリー映画ならヒッチコック。Rock 'n' Rollの世界ならビートルズか。そういうことになるんだろう。
 昨日に引き続き「ミステリーの面白さを語ろう」(『中央公論増刊号<ミステリー特集>』1987年5月)を続けたい。
 「日本の新聞もテレビも週刊誌も月刊誌も、百花斉放、百家争鳴のように見えるけど、fear and favourばかりではないですか。日本のジャーナリズムというのは、弱いやつを叩くスキャンダルにはえらく威勢のいいところを見せるが、タブーだらけではないのか。fear, favourにみちみちているのではないのか、こう小生は思うんだけれども、どうだろう」
 「日本では、田中角栄を叩いていいとなれば、寄ってたかって田中角栄だけを叩き、それ以外のことには頬っかぶり、『一犬虚に吠えて万犬これに和す』というやつですよ」
 田中角栄の失脚にはアメリカの現役の国務長官が直接関与した疑惑がある。日馬富士の暴行問題でもそうだった。我々庶民にやりきれない感じが拭えないのは貴乃花のような人物が残り、現役横綱が責任を取って引退した違和感があるからだろう。問題の背景と本質を解剖して見せてくれる人物がいなければ、ジャーナリズムは無用だ。

開高健(7)「私は日本人です。殺さないで下さい」.jpg
 最初からビビッていたわけじゃないだろうけれど、最悪の時のためにも手を打っていた。
 そこまで目を利かせることが生死を分けることは、非常線の外側で生きてきた人々には
 分からない点だろう。

 「このえこひいきのジャーナリズムとスキャンダリズムしかないなら、その私生児であるかもしれない推理小説、スパイ小説もいつまでも未熟な月足らずなものばっかりが産まれていくのではないかと思わざるをえませんね」
 社会の木鐸としての気概、常に第3者としての立場から問題の本質を捉え直そうという気概に欠ける。軌道修正を続ける柔軟さの無い思考停止状態は知的とは言えない。実際、俺の周囲の心あるジャーナリスト諸兄は昔から深く慨嘆してきた事柄だが、30年経って産業は斜陽化した。今や東大から朝日新聞社の入社試験受験ゼロという年がある。
 そして、作家の鋭い預言がここに遺されている。

      山中峯太郎。.jpg
 「敵中横断三百里」と「亜細亜の曙」などを書いた山中峯太郎。我が家では「敵中横断三百里」
 などは男子小学生の必読書だった。講談社少年文庫で読んだかな。陸士のバリバリ、山中
 先生、好きでした。こういう自由・熱血の人士が大部分だったと想うのだけれど、本省に
 巣食ったのは、モラルの低いエゴイストばかりだったという哀しい結論になるわねえ。

 そして、作家の預言がここにあった。
 「来るべき大地震がくると、左翼が一時期、まだ伸びるでしょう。資本主義に内在する基本的矛盾が暴露されたのだという論理で跳梁跋扈をきわめるでしょうし、それについていく人もたくさん出るでしょう。地震がなければ出てきようのない論理なのに、地震があったばかりに、地震を忘れてたちまちそれが独り立ちして、推理小説家、スパイ小説家の首を絞めにかかる。そして復興と同時にそれは消えていくでしょう」
 作家の預言は恐ろしい。NHKは一貫して感傷的で地に足の着いていない空理空論ばかり報道した。地震の後、極東アジアが不安定になった今、新聞は両極の思想を叫ぶだけで、現実解を求めて足掻こうとしない。謀略小説で例外的なのが特派員経験のある元記者の著作だが、こんな牧歌的な報道力の国で、本格的な謀略小説を期待するだけ惨めになる。


追記
イギリス方面で映像が色々出たらしいけれど、当人は気付かないものですわなぁ。さて、本日も某所へ通院予定也。「秘密結社」読書開始。
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