岡田純良帝國小倉日記

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開高健補遺(番外壱)――謀略小説の愛読者。
1月11日
開高健補遺(番外壱)――謀略小説の愛読者。
 「開高健の文学論」[開高健著, 中公文庫]
 備忘録は続く。まずは「衣食足りて文学を忘る」(『すばる』1984年6月)から引きたい。
 「いつの時代でも、才能というものは、人口の中にごく僅かしかいないということを思い浮かべておく必要がある。うかつに人の持たぬ才能を持ってこの世に生まれて来れば、そればかりではないにしろ、苦しい人生を送らなければならない。しかしそのような気配ある才能に、小生はここ久しくお目に掛らぬ。小器用さには出会うが、それは便利大工の小器用さ。大才・奇才はいない。大才扱い、奇才扱いされている者はいるが、それはコマーシャルであって大才でも奇才でもない。今の書き手は、自分自身に対して野心をお持ちにならぬのか、はたまた持ちようがないのか、小さな成功に甘んじているようにお見受けする」
 「小説家は敵を見失い。ヒーローを忘れ、嘘をつく気力を失い、物語りする才能を捨ててしまった。残るのは身辺雑記のみ。嗚呼!」
 「ミステリーの面白さを語ろう」(『中央公論増刊号<ミステリー特集>』1987年5月)。ここには興味深い預言が記録されている。
 「戦前の日本の大衆小説家と比べて、戦後の日本の大衆小説家のガサツ、無学、無教養はまったくお話になりません。自分のことを棚にあげて言うんですぞ。いったいこの知的水準の低落はどういうことなのか。首相に聞いてみたいところです」

開高健(7)天王寺小学校から見上げる四天王寺五重塔.jpg
 開高健の通った天王寺小学校から四天王寺の五重塔を見上げるとこんな感じですわなあ。
 シティー・ボーイですわな。7歳で引っ越した先も河内といったら失礼ですが、北田辺郊外
 サラリーマンの家。東京で言うと、阿佐ヶ谷から荻窪、井荻方面。だから東京では井荻に
 家を買ったのもよく分かる。昔のサラリーマンは高給取りだったからそちら相手に家作を
 貸して暮らしに充てていたわけだから。

 「日本では、昭和期に江戸川乱歩という一人の『芭蕉』が出てきて、この道を拓きました。日本に限ったことではないが、映画であれ、SF小説であれ、なんであれ、新しいジャンルが拓かれると、そのごく書記のうちに、一人の『芭蕉』がでてきてたちまちすべてをやってしまうという傾向があります」

       「大東の鐵人」[山中峯太郎著]表紙.jpg
 山中峯太郎センセイのもう一つの代表作、「大東の鐵人」。ゴルゴ13などは、この少年
 向けの間諜物語、あるいは、謀略小説に刺戟され、さいとうたかをが作ったわけだ。

 「スパイ小説のほうは全然駄目でした。軍事探偵の名探偵、本郷義昭がいるだけで、それも少年読物の中の英雄だった。山中峯太郎は、いわゆる欧米列強の資本主義に対抗するための、アジア同胞を救えという大東亜共栄圏思想に燃えたっていた国士的気質を持っていた人物なんで、おとなには絶望して、青少年の教育に一所懸命はげんだんですね。そのための『亜細亜の曙』であり、『大東亜の鉄人』であるわけですが、この愛国スパイ(その原型はおそらく明石大佐かと思われる)、これあるのみです」
 「人殺しなどを小説にするのは不謹慎でございますというPTA的発想が、どこかの文化圏にはあり、したがってそういう国々では人殺し小説は書かれない。あたかもそれと同じごとく、もうろうとした左翼主義に脅えて、仮想敵をつくることが出来なかった。だから謀略小説は書かれなかったわけね。左翼が減退するとともに、一挙に出てきた。けれども、悲しいかな鍛錬と経験を経ていないから、現在みられるがごとき貧果ばかり」
 これは、大沢在昌、北方謙三、逢坂剛らの一群の作家世代が標的にされているのは疑い無いところ。山中峯太郎を評価していたとはねえ。分かっとるなぁ、おっちゃんは。


追記
横尾先生絶好調で自伝も終盤に差し掛かっているのだけれど、これでまたまた興味が湧いてきた。60年代に描かれた作品が再度身近で観てみたいものだわい。
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