岡田純良帝國小倉日記

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開高健補遺(中)――旅についての備忘録。
1月9日
開高健補遺(中)――旅についての備忘録。
 「開高健の文学論」[開高健著, 中公文庫]
 なぜあの時、ヴェトナムの戦場に赴いたのか、ということが分かる若書きの一文。
 「歌を忘れた作家」(『朝日新聞』1966年12月)から。
 「マイ・ホーム時代の作家たちは書くことがなくて茫然としている。もともと小説家とはなにやらいかがわしいところのある社会の異物であった。それは仙人、乞食、不良少年、ゴロツキ、山師、香具師、詐欺師、テロリスト、狂人、落語家、ろくでなし、禁治産者などの群れの一員のはずだった。永遠の野党であるはずだった。それがいまや文部大臣から賞をもらうというケッタイなことになってしまったのである。これではよい子の作文教室ではないか」

開高健(3)すばり東京執筆の頃.jpg

 その後、15年が経った。女は死に、ヴェトナムには平和が訪れ、作家も成熟していく。だが、体の中に溜め込んでいくモノが消え、肥満するにつれ内圧はどんどん低くなっていく。「文学」を書くために四苦八苦していた作家。
 これまた講演になるが、「作家の生き方、書き方」(『波』1981年11月)から拾い読み。
 「駆け出しの頃、私は諸外国を旅しながら綿密にレポートを採って歩いた。帰国後、それを本にすると、きちんと枠にはまった正確なレポートが書けているが、仏つくって魂入れず、正確ではあるが何やらもうひとつ足りないものがあるとわかりました。それ以後は、カメラもノートも持つのをやめました。もっぱら、どうしても忘れそうな固有名詞、人名、地名、数字だけを、ポケットのマッチのふた、レストランの紙ナプキン、手のひらに書くにとどめ、自分の目と心に残ったものだけを再現するように努めた」
 「たとえば、サイゴンでは毎日のようにプラスチック爆弾が破裂して、職業軍人や政治家も死ぬけれども、大半はその場に居合わせた無告の民が死んで行くわけですね。その時目撃したキャバレーの女性のバラバラの肉体、血まみれの腸、目玉、太ももを忘れられようとしても忘れられないけれども、日本に帰っていざ書こうとすると、意外にもその悲惨な光景が消えて、道端のハイビスカスの花がどう揺れていたかがよみがえってくる」

開高健(4)ベトナム戦で生死を共にしたZIPPO(1965.2.14).jpg

 「とにかく死体が後景にしりぞき、ハイビスカスが前景に咲いている。後ろにころがっているものも、前に咲いているものも、私の心に残ったものをまとめて書けば、全体の意味が再現されるのではないか、と私は思うようになりました。以来、ノートを採ることに怠け者となりました」
 「(P仙注:アマゾンの魚、南北両アメリカ大陸縦断記など)自然と人事のコレスポンダンスを描きだす、文章を楽しめるものになっているかどうか?<文学>と名付けたときにこぼれ落ちたものをもう一度拾い上げているかどうか?これは読者の判断に俟つ以外にありません。しかしとにかく私は、再び自分の書斎に立ち戻って、ひたすら雑誌《新潮》の一挙掲載と《闇》シリーズの完成にいそしんでいるわけです。本当に!」
 開高健は「闇」シリーズは完結篇を書く必要は無かったのだが、自縄自縛に陥っていたと俺は感じている。その代わり、これをやればよかったのに、ということが一つだけある。

追記
伊吹山は吹雪いているようだったし、関東も雨で憂鬱だったなあ。だけど昨夜は美味い鴨鍋で少し気が晴れた。鴨鍋というか、あるいは鴨のすき焼き、と表現する方がより近いみたいな。お鍋というよりすき焼きっぽかったかな。
帰宅したら年賀状多数。御大はじめ諸兄より意気軒昂でお元気なメッセージ。今年は犬だけど、さて、どうかな。
去年の正月はローマだった。少しづつ歩みを進めた積りでも、少し忙し過ぎた。今年も忙しくなるのかな。
これまでに体験してきたあらゆる知略を使って燎原を駆け抜けたい。どうせ単騎の老いぼれサムライだが、まだ槍の先からは生血が滴っているわい。ゆめゆめ油断めされるな。例え千騎相手でも旗挿し者の何首かは挙げてくれよう。相討ち上等。ウッフッフ。来週、狼煙がどこからか上がる予定。お楽しみに。
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