岡田純良帝國小倉日記

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今日の一言――「まず素材の不良である」(by 北大路魯山人)
倫敦日記’17(第二十五弾)
7月14日
今日の一言――「まず素材の不良である」(by 北大路魯山人)
 先日、帰宅の直前に某スーパーマーケットに行って滞在時間5分ほどでソーセージ、肉、魚、オードブル盛り合わせ等々を買い込んで国際列車に飛び乗ったわけだ。

      201706 Paris (Parisの味).jpg

 そうしたところ、買ってきた魚(日本で言う『ひめじ』)が痛んでいた。こうして“小倉の料理番長”は調理してはくれたのだが、強烈に磯臭く、痛んでいる。
 (嗚呼そういえば!)
 魯山人がフランス料理をケチョンケチョンに言った「魯山人の美食手帖」[グルメ文庫]より。

 「まず「素材」の不良である。元来料理の良否は、素材の良否がものをいうのである。「まずい」素材をうまいものに是正するという料理法は由来発明されていない。
 「まずい」ものをうまくなおすことは、絶対不可能という鉄則がある」

20170706 恐怖!ヒメジ事件 (1).JPG

 「これは料理文化の低さを語るものであるが、根本は料理素材の貧困である。いずこいかなるところにあっても、第一番の気がかりは「良水」の有無である。良水を欠く料理、それがなにを生むかは何人にもうなずける事実である。その良水がパリにないとのことである。ビールより高価な壜の水を飲んでいる市民である。
 次に肉食人に美肉が与えられていない。羊肉、馬肉を盛んに食っている。豚は鎌倉に匹敵するよさを持っているが、鶏肉は雛であるから味の鳥としては推奨できない。しかも、拙劣な料理法によって煮殺している魚介ときては、品種が日本の百に対して一、二であろう」

 昭和29年、魯山人がパリを旅して帰国後に発表したのがこの一文であった。ここには、一つの真実があるわけで、銘記しておこうと思い直した。

 「カタツムリなど珍しがって喜ぶ仏人、だいたい日本酒の半値であるワインを貴重にして飲み続ける仏人、これを礼賛して自己の名誉のごとく感ずる色眼鏡党、日本人の贔屓客。いつになったら自分の識見で物を見、自分の舌で味を知ることができるのか。嗚呼」

 魯山人としては、大敗戦の後の日本人の惨めな姿を観て、感ずるところがあったのだろう。言い過ぎの観はある、されど魯山人の想いというものも汲むべきところはあるだろう。
 まぁ、昭和29年の状況はこうだったわけだろうが、辻静雄さんが縦横無尽にルノーで大陸を駆け抜けた昭和40年代後 半はまたまた大きく状況は変わっていた。辻さんには、この魯山人の言い切りは看過出来ないことで、果ては笑止千万という話に落ちただろう。
 昭和50年代初頭、「吉兆」の親方、湯木さんを大陸に連れて行き、旅の終わりに、湯木さんは「日本人もしっかり精進しなければならないですな」と言われたそうだ。辻さんの湯木さんに仕掛けた旅は大成功だったわけだ。
 しかし辻さんも亡くなって、湯木さんも逝去されて長い年月が経った。もっともっと各国は互いに知識レベルが上がった。情報はあっという間に世界を駆け巡る。動画でも写真でも、そして文字でも、翻訳機に掛ければ誰もが瞬時に手に入る時代だ。それでも高い山に登りたい調理人が出る。泣けてくるねえ。
 ともあれ、ひめじは、即、そのままゴミ箱行きになった。まだ、フランス産の小さな魚の哀しい出来事に気持ちがリベンジできず萎えている。


追記
ひめじは「金太郎」などという地方名が多数あり、最近では町おこしの起爆剤に使われているのだが、そういう話も、悪くないと思っているのだった。旨い埋もれた食材などは幾らでもあるのが日本だから、地元に戻ったシェフたちも足を使い、ネットワークを開拓して、様々な知恵を絞って工夫をする人たちがいるのも頼もしいねえ。

追記の追記
劉暁波訃報。最後は国際的な政治問題の渦中に置かれ、本人の意思不在のままに取引材料になった。気の毒だけれど本人は留まって踏ん張ることを決意していたから本望ではあるだろう。「国際的な知識人」のプライドがそうさせた、ということだから、これからも同じ決意の人たちは続くのだろうと思うけれど、そうでもない。萎縮してしまったかどうか、燎原の火が澎湃として起きるという光景は期待できそうにはない。
さてさて、夏を越えてどうなっていくのかな。秋には政局に微妙な動きがあるのかどうか。
合掌。
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