岡田純良帝國小倉日記

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倫敦の洗い場主任誕生。
6月17日
倫敦の洗い場主任誕生。
 92年に所帯を持ち、97年に小倉某所からアメリカ東海岸に引っ越すまでの5年間は、洗い場担当として何枚も皿を割ったものだが、その分、中々腕を上げた。狭い場所でも効率よく手洗いするのに慣れた。
 その前年2月に同じ小倉の町内で引っ越して広くなったのだが、キッチンには仔分はまだいなかった。
 97年夏に引っ越した先のNew Yorkは軟水で、古い食器洗い機はあったが、殆ど使うことは無かった。
 翌年さらにSan Franciscoに引っ越した時、ここも軟水地帯だったけれど、とうとう食器洗い機を使い始めることになった。食洗機はアメリカ人でWhirlpoolと名乗った。
 「オメエは俺の仔分だな」
 すると、“小倉の料理番長”は言ったものだ。
 「じゃ、これで洗い場主任に昇格」
 それで、俺は台所の現場から体よくお払い箱になった。
 その後、帰国して、今はアクビ娘の暮らす家に引っ越した時、“小倉の料理番長”はずずいと身を乗り出して、
 「ここは一つまた仔分を雇おう。あたしに心当たりがある」
 と言ったものだ。主任に昇格したものの、つまり、俺の信用は無い。
 “小倉の料理番長”の見付けてきたのはドイツ人のMiele君。頑丈で大きく、しかし静かに仕事をするのでもう熟練の域に達している。
 それが、昨年から先日までの1年半近く、今度は倫敦で仔分無しの洗い場担当に降格。50歳を超えて現場作業を続けていた。俺が悪い。アパートの台所に食洗機が設置されていないことを知って入居を決めたのだから。
 (まぁ、俺の腕でちょいちょいよ)
 それが大きな間違いだった。愚かな選択をしてしまった。

 食洗機稼動 20170527 (1).jpg

 この街は実は世界で最も硬度の高い水質のエリアの1つとして知られていて、水垢がヒドイ。知る人ぞ知るもので、聞きしにまさるおぞましいLimescaleだった。
 倫敦から西方の港湾都市、Bristolに至るまで、Southern Englandの大半は超硬質の水の出る地域。石灰質の岩盤を水が流れているからで、コイツがとんでもないわけ。
 国を挙げてこの事態を重視している証拠に、対策室(http://www.water-guide.org.uk/limescale.html)が設置されている。
 この硬水は何がひどいかというと、洗い場で水しぶきをそのまま放置しておくと乾燥した後にはベッタリと白い石灰のようなもの(実際に石灰なんだけれど)が残っている。これが水道水の正体だから、どんなものでも同じ現象が起きる。
 ワイングラス、普段使う鍋・釜・茶碗の類まで、全てこの白い石灰成分がベッタリと着くのだ。しかも、基本、食器用洗剤の泡立ちが悪くて油分は落ち難い。洗濯機だって同じだから、洗剤は1.5倍使えと書いてあるのだ。

      引越し20170528 洗濯機水漏れ (1).JPG
 洗濯機の水漏れ事件(1)。水もれ甲介。水漏れの様子を観察してみると、洗剤の投入口
 附近からの水しぶきがある。洗濯終了後に引き出してみると投入された洗剤が水に溶け、
 ドラムに流れ込むはずの洗剤水の排水溝にプラスチックのプレート状の部品がベッタリ
 覆いかぶさっている。

 洗剤を使ってコップを洗い流し、最後に布巾で水気を拭き取る時、キュキュっと音がするようなことは、残念ながら、そのままでは絶対に起きない。力を入れてこすって、なおこすって、ようやく皿の表面のねっとりした石灰分が消えていく。
 この1年半近く、どこかで諦めたところがあった。こんな水質では、
 「水に流す」
 なんてことは、発想として浮かぶことはないだろう。
 同じ石灰質なら映画にも出てくるが、南フランスやイタリアも同じことじゃないかと思いきや、実際にこの街ほど高い硬度ではないそうだ。
 (だから)
 昨日と同じ明日――カイゼンしない日常――この人たちの怠惰なキャラは何なんだい――しかも頑迷で固陋丸出しの一本気。

引越し20170528 洗濯機水漏れ (2).JPG
 これでは排水されないから洗剤が溶けた水がオーバーフローして溢れるわけだ。よく
 観ると、そのプレートは洗剤投入口の引き出しの液体洗剤の目安の目盛りが刻まれた
 ディバイダーだった。外れた部品が排水溝にふたしていたのだから洗剤水がどこかに
 溢れて漏れるのは当然だわな。こんなことを繰り返しながら慣れていくしかないのだ。

 ついに水質と人の気質に似通ったものがある説まで我が家で出始めて、食器洗い機を導入しない限りこの事態はカイゼンしないという結論に達した。
 (食器洗い機を!)
 今回引越しするに当たっては、かように切実な事情が俺にもあったわけだ。
 仔分はドイツからやって来たBosh君と名乗る新人だが、ひとまずよく働くようだ。石灰質のべったりしたしぶきの後は見付からない。洗い場に立つのがイヤなのではない。手洗いではキレイにならなかったからイヤだったのだ。
 (ああ、これでサッパリする!)
 この安堵感は大きい。
 周囲の諸兄姐は、水垢を気にしていないみたいだけど俺は辛かったね。漱石の場合は、この国の気候天候が合わなかったと言われるけれど、日照時間の問題だけでなく、そもそも、水が合わなかったんじゃないのか。年々歳々この身は根っから日本人だなと想う。
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