岡田純良帝國小倉日記

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山岡鐵太郎備忘録(番外其ノ弐)
4月21日
山岡鐵太郎備忘録(番外其ノ弐)
 「山岡鐵舟 幕末・維新の仕事人」[佐藤寛著, 光文社新書]
 昨日からの蛇足になるが、山岡鐵太郎の関係者の話の続きを。
 由比「望嶽亭」のお身内とも行き来があった。
 言い伝えでは、官軍大本営に急ぐ鐵舟は、東海道の難所・薩埵峠で警戒する官軍から発砲された。疾走して峠を駆け降りて、目に付いた店の戸板を激しく叩いた。女将は鐵舟と戸板越しの問答の後、暫時、扉を堅く閉ざしていたが、外の様子を伺うためにかんぬきを外した途端、大男が店に飛び込んで来た。生死を分けるリスクの中でも、戸板の向こうの女の声だけでその腹の中が読める。これは抜群の判断力だ。
 土間に平伏して事情を説明する鐵舟の話を聞き、その場で匿うことを決め、清水港に密かに舟を出したのが主の松永七郎平。主はその場で清水の次郎長に親書を認めて、官軍の大本営までの身柄の護衛を「万事頼んだ」という。
 俺の付き合ったお身内は、江戸の焼尽を未然に回避するために来たと言うような男をその場で匿い、博徒宛の親書を書く洒脱闊達・臨機応変の人物ではなかったようだ。立派な教育者ではあったが――だが、歴史とはそういうものだろう。
 そもそも――俺の言いたかったのは、維新の事跡は150年前の過去ということだ。鐵舟の生きた時代と、今の我々との関係は、もうとても薄い。
 別の言い方をすれば、平時であっても、誰もが鐵舟になる可能性があるし、乱世でも、とても鐵舟には及ばない。どんな時でも歴史から学び、危機に及んで今を突き抜けることができればと想うわけだが、実地にその場に立った時、どれだけやれるかと想う。

       山岡鐵太郎 (1).jpg

 往時は「万事頼む」と言われれば、命懸けになった。今、「万事頼む」と人から頼まれて、アナタは絶体絶命でもやれるか。やれまい。
 西郷も禅者と記したが、鐵舟とは禅者同士の気合がある。鐵舟は、維新後に、死んだ人たちを弔うために谷中に土地を買い、「全生庵」を創建した仏門の人でもある。切り結んだ双方の人たちを弔った。対峙した人たちは仏教と禅者の同じ土俵があった。
 大乱になってもおかしくない時、約260年も続いた平時でも、官軍も賊軍も街道の料亭もヤクザも、全員に共通する精神世界があったということだろう。今とは違う。
 別の言い方をする。
 俺はEUにギリギリぶら下がっている国々の人々に知己がある。新たな国造りをする人たちは皆さん30代から40代ばかり。50代以降はもう新しい国を指導できないと諦めてじっと黙っている。言いたいことも言わずに口を結んでガマンしている。
 社会が若いというのはこういうことを指すのだと感じられる。それくらい溌剌とした社会を目の当たりにすると、却って「御一新」の江戸末の回天を想い出すことになる。150年前の日本は、今の彼らと丁度同じような時代相にあった、そういうことだろう。
 何しろ、山岡鐵舟や高橋泥舟は32歳から33歳。西郷隆盛が40歳。勝海舟が45歳。成熟してしまった今の日本なら、企業で言うと、主任さんや課長さん、精々早くとも執行役本部長さんくらいの年齢に相当する。
 維新後一世紀経たずして天皇を頂点とした大日本帝國は一旦、滅亡した。その事実を鑑みると、敗戦後70年強が経過し、負け犬根性が社会の隅々まで浸透し、国を売るような人が首相の座に就いたことも納得がいく。今や危ない国家に囲まれて、とても新しい国造りどころでない。国難を乗り切る次善の策を講じなければならない。
 外海に漕ぎ出せば、先方様には共通の土俵は無いと考える方が良い。自分の価値観と通じ合う人たちはいない。海の外との交渉に馴れ合いは期待できない。地政学的にも敵視する人々に囲まれて、厳しい、孤絶した環境にある。江戸末期は大陸側の脅威は列強であったが、北方からは某帝国の侵入も懸念されていた。
 今も本質的に高いリスクに囲まれている点では往時と変わり無いとも言えるだろう。今や、社会が老いて、少子高齢化が進展し、政令指定都市圏への過度な集中のために地方の凋落は止まらない。大人が夢を語らないからマイルド・ヤンキーが増殖する。
 維新の事跡は最早ファンタジーの世界にある。だから若い夢を喪った今、あの時代に憧れる人々が絶えないことはよく分かる。だが、哀しいけれど、維新を有難がっても直面する課題がまるで違うから、今ある課題解決の指針にはならない。
 歴史を学ぶのは素晴らしいが、往時と隔絶していることも併せて考えないと、とんだ痛い目に遭う。イヤなことを書くようだけれど、敗戦後、社会がセコくなったから、今や敵は身内に隠れていることが多いのだ。まことに哀しいことではあるが、自戒を込めて記しておきたい。


追記
シャンゼリゼで銃撃と射殺の報。本日は某所で○欧の進軍の状況をつぶさに聞いたよ。さらに○欧の移動の話なども出ましたねえ。

追記の追記
欧州戦線波高し。第1回目の投票前に欧州からの投資が一斉に東京から引いている。これでまた第2回目の投票結果でまたアジアに戻ってくるかどうか。フランスの候補の顔触れを見ると、エリートを育てているし、育っているわね。優秀な人は優秀だからなあ。日本はそういう人がサッとトップになり難いのが辛いところ。国難の意識が低いからってのもあると感じるわねえ。
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