岡田純良帝國小倉日記

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山岡鐵太郎備忘録(壱)
4月16日
山岡鐵太郎備忘録(壱)
 「山岡鐵舟 幕末・維新の仕事人」[佐藤寛著, 光文社新書]
 それほど期待はしていなかったのに、無類に面白い本だった。
 勝海舟ファンとしては江戸無血開城の謎であった部分が本書でつながった感じがある。 勝海舟は山岡鐵舟をよく見抜いてよく任せて、また、山岡鐵舟も命懸けで交渉の場に
 臨み、これを大親分の清水次郎長がサポートしたということだ。
 人が人を知るといっても、組織にはプロトコールがある。いわゆる手順というものだ。 組織が機能するには職能と権限が機能していなければならないわけで、これが、法治 国家の基本でもある。日本ではその辺りを理解しないで歴史や政治を語る人が多くて 困りものだ。
 というわけで、本書から備忘録で気になる部分を少しだけ抜粋しておきたい。
 1. 剣の弟子、後の商人(平沼)専蔵(1836-1913年)に対して
  山岡鐵舟(1936-88年)が弟子入りしてきた武州飯能の人・専蔵に対し以下の訓示を垂れた。
  「剣がおまえより未熟なものは武士ではいくらでもいる。しかし、目端が利くことや、
  才気と度胸、これらは下っ端武士には不要のものである。おまえは武士になるよりも、
  商売で成功する筋をもっている」
 埼玉飯能(現:鳩山町)の下級士族の平山専蔵。弟子入り後、暫く後に鐵舟は訓戒し、商人になるよう薦めた。ちなみに一度は師と仰いだ鐵舟と専蔵は同年である。
 本書に出てくる主要人物の高橋泥舟も徳川慶喜も、実は殆ど「天保の同級生」という点に着目をしたいところ。30歳そこそこで同年か数年違いの人たちが、徳川方で大いに結束して大政奉還に預かったことは面白い。これぞ「劇的」というものだ。
 平沼専蔵は相場師で成功した後、明治期には原、茂木と共にハマの3大商人として隠然たる力を発揮した。横浜で平沼貯蓄銀行を興す一方、現在の西武鉄道を創立し、出身の武州を中心とする交通インフラの整備にも力を注いだ。西武鉄道の池袋線が飯能を通っていることに注意したい。

       山岡鐵太郎 (1).jpg

 平沼は同年の山岡の言葉をよく聞いて、横浜で商人となり、山岡らには外国商館や外国船見学等を手引きして、つぶさに実態に触れさせ、学ぶ機会を与えている。
 2. 徳川慶喜(1837-1913年)から直接官軍との交渉を命ぜられた時の鐵舟の諫言
  (このような事態になって嘆かわしいと落涙する慶喜に向かって)
  「何を弱きつまらぬ事申さるるや。謹慎とありては詐るにても有しか。何か外にたくまれ
  し事有べきか」
  まさか自分を代理に立てて他に一計を案じているのではないか、と、半ば叱責調でその真意を質している。
  山岡にとって義兄に当たる槍術指南の高橋泥舟(1835-1903年)は、この時点では、鳥羽伏見の敗戦後、慶喜の警護責任者として日頃から将軍膝下で接していた。官軍東征の報で、勝海舟(1823-1899年)は軍隊を統率する立場として泥舟に官軍側との交渉を命じる。だが慶喜は泥舟を引き止めて離さない。泥舟は鐵舟を交渉代理者に適任と考え、慶喜に鐵舟を首実検させて内諾を得るその場の一言。鐵舟も命懸けだ。
 3. 山岡鐵舟と対面して、勝海舟が抱いた第一印象
 「旗本鐵太郎に逢う。一見その人となりに感ず。同人申す旨あり、益満を同伴して駿府に
 行き、参謀西郷氏へ談ぜむという、われこれを良とし、言上を経て、そのことを執せしむ」
 (益満:薩摩藩士益満休之助のこと)
 幕臣として陸海軍を統帥する立場にあった勝海舟に、官軍との交渉で泥舟を通じて慶喜から全権を委任されたので了解するように面談に行った山岡鐵舟。その面談をした日の勝海舟の日記がこちら。泥舟からも慶喜が承認している報は入っていたと想われる。そうでなければ、幾らなんでも初対面の男に全権を委任できはしない。また鐵舟としては、泥舟からも申し渡され、交渉当事者としてフロントの責任者である勝海舟に最終的な了解を得んとしたものと推論している。
 本書は意思決定のプロトコールの推論で、判然としないところが無い。例え天下の大将軍の了解を得ていると言えど、自軍の総帥の了解を得なければ、幕府の交渉の全権を任されたとは言えない。本書はその手順を丁寧に推論して信頼が持てる。


追記
Frederick Forsythが目撃した第3次世界大戦直前、深夜2時に行われていた兵器移動の光景は、実は堀栄三さんも目撃していたわけだろう。Forsythの打電はロンドンを揺るがしたが、日本は揺るがなかった。揺るごうにも敗戦国の身、自主的には何もできなかったわけだろう。北朝鮮の問題では、日本の「に」の字も出てこない。

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