岡田純良帝國小倉日記

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今日のひと皿(2)――Marseille某店のFruits de Mer Risotto
3月20日
今日のひと皿(2)――Marseille某店のFruits de Mer Risotto
 Marseilleでは21世紀の今日もって、まだ漁師家族たちによる朝市が開かれているのだ。この朝市は有名だが、実際に見ると、中々胸に迫るものがある。旧港は岸壁が深くU字型に切り込んだ形になっていて、市場はそのボトムで開かれる。
 常日頃はヨットハーバーとして使われているから、U字型の入り江には大型のヨットが櫛のように係留されているから、ボトムに立って地中海を見ると決して見通しは良くない。
 「来た、来た、お父さん、来たわよ!」
 マストの林の向こうから、しなびたような漁船の姿が見えると常連客の夫婦は声を掛け合って岸壁に集まっていく。
 ヤンマー製のディーゼル・エンジンが猛り狂ったような唸り声を上げ、漁船がゆっくり横付けされるのを待って、人の群れがどっと移動する。見ていると、2艘1組のようだ。水揚げされた獲物はすでに船上で直径1m程の黒い大きなポリバケツに入れられていて、若い息子(兄)がドサッと地上に放ると、別の息子(弟)がこれを引きずって行く。
 「今日はイキのいいアンコウがあるかい?」
 「そう焦るなって」
 知り合いの年寄り客をなだめるのも息子の役目らしい。

20170304 (掲載1).jpg

 家族経営の漁師の市は各々少しずつ個性があって、甲殻類、とりわけ牡蠣などの貝類を中心とした店はアジア系の客が群れている。生牡蠣を打ってその場で喰わせてくれるのはMandarin語圏の人々に知られているようだった。
 フランスの美食文化は知られるところだが、こと牡蠣の生食については日本は足元には及びもしない。牡蠣打ち職人のÉcailleでも知られる通り、牡蠣はその場で打って喰う。俺はParisでも某地区に還暦過ぎのマダムの経営するいい店を見付けたけれど、ここでも牡蠣はその場で打つ。
 マダムは俺が酒好きなことを覚えていて何も言いもしないのにグラスに並々とダブルで白を注いで呉れる。歳を取って俺の好みになったEllen Barkin(1954年-)に似ているので多分彼女自身も意識しているんだろうな。
 この外、魚類は豊富で、タコの足、モンゴウ、アオリ等のイカ類、スズキ、ホウボウ、アンコウ、オコゼ、ヒラメ、鯛、ハタ、鯵、鰹まで、日本で手に入る魚介類は大抵売っていて賑やかだ。鰹も日本の市場から比べると小型のモノが主流だが、丸々と太ったイキの良さそうなのを見ている内にワクワクしてツバキが湧いてくる。
 そんな俺の話はどうでも良い。古くから知られる朝市は今も変わらぬ賑わいなのだが、すっかり消えていた風俗もある。旧港広場もそうで、昔、この辺りの老人は地元で生まれた球技、Pétanqueを広場で楽しんでいたものだ。金属製のBoulesを木製のJackに投げるゲームで、老人がグループになって競い合い、終わるとワインを呑みにCaféに入る。

20170304 (掲載2).jpg

 今の人は知らないかもしれないが、残り少ない人生を予感しつつ人々の間から老人らが打ち興じるゲームを観戦しているのが、変装して口髭を蓄えた“おやじのギュ”こと、Gustave Minda(Lino Ventura)なのである。
 おっといけねえ、メシの話だったっけ。広場から、たった一ブロック裏に入った場所にある某店。有名な店なのだが、店構えがショボくってワリを喰っている。世界中から客が来る。しかし皆さん、あまりに店がカジュアルなので拍子抜けしているようだ。
 俺たちはフライの盛り合わせを頼み、「Fruits de Mer Risotto」と「Soupe de Poissons」をさらに頼んだ。
 昔のMarseilleなら、紅白のチェックのテーブルクロスを掛けたRestaurantがあったのだろう。実は、旧港のこの店も、1階は天井の低い厨房で、客は、狭い階段を昇って2階に通される。この1階と2階の不思議な構造を見て、
 「ゴールデン街だよね」
 アクビ娘が言った。言うことにヒネリが効いてらぁ。建築専攻の学生だけあるわね。
 アクビの言う通りで、チョンの間の構造はまだこの旧港裏の辺りには残っているのだ。入江に面した古いホテル群も同じで、往時、7つの海をまたにかけて往来した船員たちの夢の跡が楽しめる。
 つい5年ほど前までは、秋葉原から神田の高架下にはチョンの間の跡を改造したようなバーが残っていたが、今はどうなのだろう。
 ともあれ、「Fruits de Mer Risotto」と「Soupe de Poissons」。生臭さは全く消されていて、とりわけリゾットは練り混んだチーズがソースと渾然一体に絡み合って、最初の一口からクライマックスが来た。
 (うっ!)
 またまた図らずも両目からどっと熱いものが。


追記
雨模様が続くロンドン。ちょっとツライなあ。晴れては来ても、また雨になる。ウイットつてのは皮肉のことだから、雨の続く町で育った人間は辛抱強い皮肉屋になるってことなんだろうかねー。
| 7喰う | 06:20 | comments(0) | trackbacks(0)
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