岡田純良帝國小倉日記

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今日のひと皿(1)――Marseille某店のBouillabaisseとMarseille某店のSea Food Soupe
倫敦日記’17(第十一弾)
3月19日
今日のひと皿(1)――Marseille某店のBouillabaisseとMarseille某店のSea Food Soupe
 子供の頃からMarseilleは憧れの街だった。これは映画による影響が強い。
 William Friedkin(1935年-)のアメリカ映画、「The French Connection」(1971年)を観た時に、映画には殆ど出て来ないまでも、タフなNYPDが待ち受けるNew Yorkに次から次へと手強い男たちがヤクを携えて、あるいは拳銃を持って現れる。それがMarseilleであった。
 「French=Marseille」として俺の脳幹の深い部分にその名が刻印された。
 さらに多感な年頃にはJean-Pierre Melville(1917-73年)の最高傑作、「Le Deuxième Souffle (邦題:ギャング)」(1966年)を観た。Lino Ventura(1919-97年)は余りに美しく、そして哀しい。Christine Fabrega(1931-88年)の稼業の女らしい気風がカッコ良かった。何時か行きたい街として決定的に意識されることになった。

        「おとしまえをつけろ」表紙。.jpg

 原題は「第2の息吹」。稼業の世界では脱獄した男が再度大きなヤマを踏むことを指す。原作はJosé Giovanniの同タイトルだ。ハヤカワ・ミステリで「おとしまえをつけろ」[岡村孝一訳]で出ていた。初老に近い男、暗黒街での通り名の“おやじのギュ”が脱獄し、紆余転変の挙句、もう一度大きなヤマに挑戦する。
 前半はParisだが、後半はMarseilleが主な舞台となる。犯罪現場がMarseille手前に拡がった南仏の山岳地帯であること、犯罪に使った車を絶壁から地中海に落とすシーンの崖の白さ、そして最期の大勝負はこのMarseilleが舞台だ。空港から乗ったバスで、もう俺の気分は、身を隠し、髭を蓄えた“おやじのギュ”であった。

       「The French Connection」英語版表紙。.jpg

 今回、初めてMarseilleに足を踏み入れ、コーフンは隠せない。あの教会の丘の上から、とか、あの路地の裏で、とか、あの入り江に降りる階段で、とか、もうジワジワと自分の胸を過ぎるシーンがあって切ない。
 José Giovanniは、何歳になっても挑戦し続ける男を描き続けた人だが、この原作では、Parisの暗黒街で名を売った男、“おやじのギュ”が再びヤマを踏む理由がカッコイイ。せっかく脱獄しても、過去に身に付いた暮らしのため、質素倹約の暮らしができないのだ。
 男は名誉のために死にに行く。だが、Christine Fabrega演じる暗黒街の女が“おやじのギュ”を見送った後、誰の許に走るのか見えていて、José Giovanni作品として珍しく男女関係で胸苦しくさせられる。実は男の視点から描いた恋愛の傑作でもあるのだ。
 つまり、俺にとっては、「The French Connection」では、Turquieの悪い商売人らと組んだ戦後の新興French Gangの暗躍する街であり、「Le Deuxième Souffle」では、Parisから流れてきた古臭いGangの脱獄範が交錯する街がここ、Marseilleなのだった。

Bouillabaisse地獄 (3)

 ガキのようだろう。しかし、男はそんなものだ。
 俺は「Pépé le Moko (邦題:望郷)」(1937年)が大好きで、高名な映画評論家になった人と、その幼馴染を知っていて、2人の片割れは先年世を去ったが、2人は最晩年まで、映画の舞台になったAlgierまでどちらが先に行くか競争していたことを知っている。
 彼らは旧制中学・高校で席を並べた。戦中は旧制中学で工場に働きに出た世代で、昭和後半から2人共にそれぞれ違う世界で一隅を占めるようになった。だが、カタギの世界に身を置いても、ココロは悪ガキみたいなところがある人たちだった。
 何もMarseilleに限った話ではないが、いい店は接客する側の人間にも優しさがある。俺たちは予約も無く、突撃して開店直ぐに店に飛び込んだ。マネージャーは鷹揚に構え、テーブルを作って呉れた。Soupeに入れる魚介を説明して呉れる男の子はヤンチャ盛りで髪をオールバックにしていた。若い頃、「クール・ソロ」の鮎川誠みたいでもあった。

      Bouillabaisse地獄(1)

 Provenceの料理は俺の味蕾の直球ど真ん中に入ってくる。街からちょっと車で走ると、小さな港町がある。文字通り絵に描いたような信じられないほど映画みたいにカッコイイ小さな漁港。そこにある某店のBouillabaisseである。Salvador Dalí(1904-89年)も通っていた老舗だが、そんなことはどうでもいい。喰って初めて彼らの矜持が分かる。
 そしてMarseille港の某国沿岸警備艇が係留されているHarborのド真ん前にある某店。ここのSea Food Soupeも旨かった。

Bouillabaisse地獄(2)

 先般のNapoliもそうだったのだが、この街にも、男の論理が生きている感じはあった。女にとってイヤなことはなかろう。男は優しくないとダメなのだ。少なくとも、俺は一人居心地が良く、自然に笑いが浮かんできて困ってしまった。
 余計なことだが、「Le Deuxième Souffle」は2009年にリメイクされた。そのこともあり、1966年のOriginal作品が日本でさえ再評価されているそうで、嬉しい。1985年に初めて観た時は、この世界に魅入られてしまい、現実世界に暫く戻ることができなかった。
 若い世代の間でグッと評価が高まっているのは頼もしく心強い限り。Marseilleの街のそこここに“おやじのギュ”は生きている。Napoliと共に何時でも再訪したい街の一つになった。


追記
本日も静かに市内を潜行しておりましたが、結局のところ、何も決められずにトボトボと帰還しました。
昨晩からずっと「The Sicilian Clan」問題を検討しておりました。クルマを運転するとなると、今回、帰国した折に、眼鏡を作らんとアカンわい。彼らがかけたように、薄手の渋い黒メガネにしようかなと想っております。

The Sicilian Clan (1).jpg
| 7喰う | 07:09 | comments(0) | trackbacks(0)
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