岡田純良帝國小倉日記

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気になる本――ポピュリズムの取説。
3月15日
気になる本――ポピュリズムの取説。
 「ポピュリズムとは何か」[水島治郎著, 中公新書]
 見出しが目を引く。「『パーティーの泥酔客』と民主主義」とある。
 評者も専門家で、著者は無論、欧州政治史・比較政治の専門家。それでもポピュリズムという言葉は定義そのものがまだ曖昧なのだ。そもそも副題が「民主主義の敵か、改革の希望か」である。右参照⇒http://dokushojin.com/article.html?i=829
 著者の水島さんはオランダの専門家で、過去にオランダの政治状況に関する著書もある。
 「オランダという国は、安楽死にしろ、売春や同性婚にしろ、他国に先駆けて合法化しています。同時に影の部分も先進的で、二〇〇二年に右のポピュリズム政党が政権入りし、反移民政策へと舵を切りました。それがその後、ポピュリズム政党の主張の核となって、他国に波及していくのです」(上記の週刊『読書人』から)

     Tina Turner!

 「本書はあくまで、ポピュリズムを、エリートを批判する『下』からの運動として捉えている点に特色がある」
 「本書における一つのポイントは、ポピュリズムが民主主義と切っても切り離せないという指摘にあるだろう」
 これもまた、わざわざ記されているのだ。世界的なポピュリズム現象は学者も驚かせた。
 「イギリスのEU離脱、反イスラム、反エリート、トランプ大統領誕生……世界を揺さぶる『熱狂』の正体」
 帯にそうあるが「熱狂」を説いたものではなかろう。熱狂の存在を認め、出現した場合に、これをどう取り扱うのか、という点に本書の真価があるように感じられる。

        「ポピュリズムとは何か」表紙。.jpg

 「ポピュリズムはしばしば排外主義へと向かい、少数派の人権を抑圧したり、立憲主義を脅かしたりする。とはいえ、ポピュリズムが人々の不満をすくい上げるものである以上、ただ否定するばかりでは、むしろその説得力を増すことにつながりかねない」
 本書によると、過去に現れたポピュリズム正統とは極右系の政党が殆どであったのだが、
 現代のポピュリズムは、既成政党に緊張感を与えるという点に評価を与えている。その出現によって、停滞した既成政治・政党を緊張状態に置き、活性化させるというプラス面を評価すべきとしている。無論、注意しなければならない点もある。
 「欧州のポピュリズムが、政教分離や男女平等の名の下に反イスラムを正当化している点に警鐘を鳴らしている点が重要であろう」

        「保守主義とは何か」表紙。

 「カリスマ指導者がいなくなっても、しばしば運動は持続する。人々に不満や不安がある限り、ポピュリズムはつねに現れるのである。著者はこれをパーティーに現れる泥酔客に例える。迷惑ではあるが、その言葉にうなずく人も少なくない。この珍客をどう扱うかによって、民主主義の真価が問われるのである」
 「本書が期待するシナリオは、ポピュリズム政党の進出に危機を感じた既成政党が、『開かれた』政党に向けて自己変革へと進むことにある」
 あまり言われないことだが、グローバリズムに乗った人は成功者で、乗り切れなかった人たちがそれに異を唱えている図式が、世界的な潮流の底辺にあるようにも感じられる。
 著者も語っている。
 「一九九〇年代後半以降、グローバリゼーションの波の中で、その仕組みが崩れていく。今ではグローバリゼーションに対応することが、右派も左派も、政治エリートの至上命題になっているのです」
 Trump現象が吹き荒れていた昨年11月のアメリカ合衆国は、ロシアのPutin大統領が、共和党員間の人気投票で第1位に躍り出た(民主党員間では下がっている)。

Drunken Tina at the Party....

 昨年はモルドバとブルガリアで親ロ派大統領が誕生した。2人は共に既存のEU寄りの政治エリートが難民を受け入れ、自国を破滅に導いていると主張して人気を集めた。
 日本に帰国する度に異様に感じるのは、戦史物や歴史書よりも、書店でのビジネス書の見せ方とベストセラーの多さである。徒労とは思いたくないが、こちらで奮励しているのは一体何のためか、と、ともすれば折れそうになる時がある。
 評者が語る。
 「日本では(中略)、橋下徹氏にしても小池百合子氏にしても、ポピュリスト的な存在は、すでに現れています。安倍首相の「日本を、取り戻す」も、ポピュリズム的な言説です。ただし、今のところ、既成エスタブリッシュメントである安倍政権自体がポピュリズムを部分的に取り込み、ある意味で右派ポピュリズムの台頭を抑え込んでいる」(同上)
 近頃、ようやく日本のメディアにも、小粒でも筋の通った正論を言う記事が散見されるようになった。既存メディアも、ネットの速報の氾濫、海外TV・海外媒体の進出で、いわば緊張状態に置かれつつあるからか。本書の著者と評者2人の骨っぽい対談を掲載した週刊「読書人ウエブ」も、書評メディアとしてまことに興味深い。
 TOYOTAは正月広告を全く打たず、今後はネット広告を拡大すると新聞各紙に伝えたそうだ。企業も政党も同じ。柔軟に変わる力が強さの源泉になる。日本も勇気を持って変わるべき時だ。「戦後幻想」はもう乗り越えたい。内輪同士の詰まらない足の引っ張り合いの猶予は残っていない。(『この一冊』東京大学教授・宇野重規評、日本経済新聞)


追記
2人は東大の同級生ではないかな。図らずも同じことについて問題意識を持ち、結局、既存政党が自ら危機意識を持ち変化するシナリオに期待している。そうだな、俺も彼らとスタンスは似ている。しかし既存の枠組みが崩れそうだという危機意識は彼ら以上に強いかも知れない。俺も必死ですら。多分、10年後には書けるかな。複雑怪奇の世界へと踏み込みそうな気配濃霧注意報。
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