岡田純良帝國小倉日記

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人を思慕する想いの強さ――青山光二篇。
2月5日
人を思慕する想いの強さ――青山光二篇。
 旧制三高からのオダサクの盟友・青山光二。95歳の寿命を全うしたが最晩年には銀座のカフェーの女給であった女房を看取った。次の話は以前に紹介したが、また引用する。
 「(「吾妹子哀し」で川端賞の)受賞の連絡を受けた日の夜、織田作之助が夢に現れて、
 『おれたち結局行き着くところは『夫婦善哉』やな』
 と言ってニヤっと笑ったんです」
 青山光二は神戸の男で、ヤクザの話などを書いて中間小説作家のような時期もあったが、その後、恩師のドイトラこと、土井虎賀寿の生涯を描いた「我らが風狂の師」で蘇った。

土井虎賀寿「華厳経」独訳を推す 渡辺照宏
 数ある仏教聖典の中でも「華厳経」ほど重要なものはない。規模の宏壮、表現の豪華は無論のこと、思想の深遠、豊穣さから見ても無比の宗教文学である。古来、多くの高僧たちによって尊重され、その影響力は絶大であった。
 かつて土井さんのドイツ語訳の一部を見せられ、訳文の流暢・的確なことを喜んだが、厖大な「華厳経」全部の訳を完成されたと聞いて、さらに驚愕した。
 今後も土井訳に代わるようなものが世に現れる可能性は無いものと私は思う。ドイツ語訳に基づいて、英訳、仏訳等が企てられることはあり得るだろう。土井訳の出版の完成を待望する。

 深川不動尊の坊主で、晩年は成田山で研究を続けた仏教学者。ドイツ留学したこういう学者が推すところにドイトラの恐ろしさがある。
 そうして、華厳宗の総本山東大寺の管主・清水公照のこの持ち上げ様もどうだろうか。恐ろしい。

感謝と喜びを 華厳宗官長東大寺住職 清水公照
 東大寺では大仏開眼千二百年記念事業の一端として、かねて華厳宗所依の華厳経のドイツ語訳を故土井虎賀壽先生に御委嘱申し上げておきました。華厳経は釈尊の最初の目覚めの内容を書きしるしたものでありまして、最後の説法である法華経と共に最も重要、かつ諸経中で最も大部の哲学的に深遠な経典であります。
 土井先生は昭和二八年春から三八年秋にかけ実に十年余の歳月を傾けてこれを訳了されました。華厳経総本山東大寺としては、この貴重な文化遺産・華厳経の存在をとりあえず西欧諸国に知って頂くことを無上の義務と考え、その出版を念願して片時も忘れたことはありませんでしたが、内外に渉る諸事情のため訳了後一二年に到る今日なお、誠に心ならずも上梓の運びに到らぬ現状であります。
 この度故土井先生の御知友先生並びに御門弟方々が東大寺にかわって刊行会を結成され、大部の華厳経の内の最も古く又最も魅力的な部分である「入法界品」を本の形にして下さいますことは、何とお礼の申し上げ様もなく、東大寺とのこの深き御結縁を誠に有難く感銘致す次第でございます。

清水公照展。

 これによって行き詰まれリと聞く西欧の思想界に一脈の血路を開き、一点の光明を投じることが出来ましたならば、やがてこの光明に与かる全世界の喜びは申すに及ばず、このために永年苦労せられました故土井先生の霊、このことを熱心に推進されました前華厳宗官長・故上司海雲大僧正の霊もさぞかし安らかに冥せられることを想って私ども東大寺山内一同は感謝と喜びの内に湧き上がるものを禁じ得ないのであります。
 御知友諸先生及び御門弟諸賢の御盡力と御協力が仏の広大無辺の御加護によって恙なく所期の目的を達することを得られますようひたすら祈念致す所存でございます。                 合掌

土井虎賀寿訳「華厳経」(ドイツ文)刊行のための募金趣意書
 大きな苦悩の中から開かれた悟りに多くの苦悩が救われます。
 土井虎賀壽先生の著書を読み、その画を見れば、先生が今の世で大きな苦しみに生き、大きな悩みに光を見つつ死なれたことが分かります。土井先生が満十年心血を注がれたドイツ語訳「華厳経」がただの語訳であるはずはありません。
 最も大きな苦悩の中から悟りを開かれた釈迦牟尼仏の声に、科学文明の究凶から超脱できる智慧を聞き、世界に伝えたいと願う光明を見出されたであろうことは、先生の遺書「時間と永遠」その他によって、私たちにも推察できるところであります。
 しかし、苦心の訳も原稿のままでは西欧の方々に読んで頂くことができません。この度その昔先生に親炙した者達数名が相謀り、先生旧知の方々の御賛同も頂いてドイツ語訳「華厳経」刊行のために募金活動を始めることになりました。上よりの御加護はもとより皆さま方の深い御理解と御協力によって、この企てが成功しますよう切に祈るものであります。  昭和五十年六月

発起人
 相原信作、赤井彰、秋月康夫、朝倉保平、天野貞祐、池田敏子、石橋長英、石原謙、磯田仙三郎、市原豊太、稲津紀三、上岡大樹、大賀小四郎、大島康正、大西一正、嘉治真三、鹿野治助、北森嘉蔵、黒沢清、桑原武夫、小池辰夫、後藤平、高山岩男、相良守峰、清水公照、清水俊夫、下村寅太郎、白旗信、シンチンゲル、神保光太郎、杉本健吉、鈴木成高、隅谷三喜男、関湊、高田三郎、高橋健二、田中美知太郎、谷川徹三、辻光乃助、辻村公一、長尾雅人、中村元、夏堀正元、西谷啓治、野田又夫、星野慎一、本田弘人、牧野四子吉、町沢直治、丸山武夫、萬沢遼、三輪正、矢内原伊作、吉川幸次郎、吉村正一郎、渡辺精

華厳経表紙。

 青山光二、秋山虔、安部英夫、有吉広介、粟津則雄、猪飼正秋、五十嵐雄一、池内一、池田進、池田芳蔵、磯田一郎、板倉創造、井上幸夫、猪木正道、伊部利秋、今津晃、植木光教、上田捻、宇高基輔、梅田義孝、瓜生忠夫、大岩泰、大浦幸男、大江兵馬、岡教道、岡田輿、岡田良一、岡本敏雄、鹿毛誠一、貸川博之、門脇卓爾、亀谷敬昭、川勝義、雄、川野諫、喜田村健三、北村忠夫、北山茂夫、木村又雄、小林昭、小松春雄、酒井府、板倉篤義、佐々田鎮正、佐藤崎人、佐藤保一、佐藤保隆、柴野方彦、芝原泰三、清水純一、下川浩、白鳥令、管康男、杉山好、鈴木常夫、鈴木康治、鈴木栄敬、関徹雄、宗宮好和、高木清太郎、高島邦夫、高田諭吉、高橋徹、高原富保、田口哲夫、竹之内静雄、瀧村元、瀧村基雄、田中敦、田中京之介、田鍋健、環昌一、環直弥、田宮虎彦、田村芳朗、土屋英昭、鳥海金郎、鳥海茂、鳥谷部平四郎、永井純一、長尾健蔵、中嶋晴雄、中島文夫、中西一郎、中村金夫、中村典夫、中易一郎、西海太郎、新科哲、西谷裕作、野口毅、野嶋薫、野間宏、乗松恒明、萩原延寿、畠山勇、早川崇、林好雄、林田悠紀夫、林屋辰三郎、東井善三郎、菱田正尾、藤正英、平岩新吾、平野直人、古田光、星文七、前川誠郎、桝田隆治、町田喜義、松井直行、松田寿郎、松村善雄、松本十郎、南雄三、村上豊陽、村田敬次郎、村田良平、基俊太郎、木原武之、亮護雅夫、森本金吾、守山晃、矢口洪一、安井達弥、安原美穂、安本行雄、柳川啓一、山中康子、山根有三、山村英子、山本栄一、山本弘、湯田雅夫、横山滋、吉田行範、鯊裟粁干據∪藺綮囲此∀橡槓震

 躁鬱病と診断され、原町田の精神病院に永年間入院していたドイトラ。自室の壁に魚の絵を描き遺してあり、その魚こそ、イエス・キリストのことを指していたのだろうと推論している。青山光二は、「我らが風狂の師」を小説と書き遺したが、そうではないだろう。この追悼は素晴らしい。ドイトラは養子。旧姓久保。香川の医家の血筋である。
 ドイトラもいいし、オダサクもいいけれど、青山光二もいい男だなあと俺は想うわねえ。生前には喜多見の自宅をお訪ねすることも無く、今となっては取り返しのつかないことをした。悔やんでもあとのまつりである。


追記
ここ数日の絶不調からようやく回復しつつあるが、まだまだダメずらよ。
| 10随想 | 08:47 | comments(1) | trackbacks(0)
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コメント
岡田純良 様

突然のメールで、大変失礼いたします。

私は、土井虎賀寿先生の娘様であります、土井佐保先生の生徒でありました。

土井先生には、獨協大学の「リルケの詩」のゼミで、私は大変お世話になっております。先生は、いろいろと私に対して心をくだいてくださり、またとても優しく接してくださいました。

私は、獨協大学を1984年に卒業いたしました。

卒業後何年かして、何かの折に土井佐保先生が数年前にお亡くなりになったということを知り、私は途方もない空虚感を味わいました。

先生とはお話ししたいことが沢山あったのです。先生がこの世に生きていてくれるだけで、私は安心でした。

3年ほど前でしょうか、土井先生のお墓に手を合わせたいと思い、住所を頼りに川崎市のご自宅に行きましたが、

お宅は既に無く、近所の方にお伺いしましたら、隣接の公園の一部になってしまったとのことでした。

どうしても佐保先生のお墓に手を合わせたく、お墓のある場所を岡田様がもしご存知でしたら、ぜひ教えていただきたく本メールをさせていただきました。

ご返信を頂ければ幸いです。


鎌田 国寿(かまた くにとし)

携帯電話 090−3432−8774
携帯mail kamata-92104@ezweb.ne.jp
| 鎌田 国寿 | 2014/05/07 10:43 PM |
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