岡田純良帝國小倉日記

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芸談(下)――異形も話の内。
12月28日
芸談――年末にちょっといい話(下)
「背中まるめて 『小沢昭一的こころ』のこころ」[小沢昭一著, 新潮文庫]
 昨日に引き続き、「広告批評」の1985年(昭和60年)5月号掲載の一文、「話のはなし」から。
 「大事なのはそういう一連の(テキヤの大道での商売の)プロセスの中で、相手から、なにがしかの信頼感をかちとることね。このおじさんはなかなか面白い、説得力もあるじゃないか、そういう信頼感。なにかしら、頼りがいのあるようにもっていった上での商売ですよね。最後には自分の懐の中へ入れる。このへん、やはり政治家ともどこか共通しているものがありますね」
 「そういう嘘だと知りながらそれをよろこぶというようなところが、みんなあるんですよ」
 そうして、その後で、やっとこさ教師の話を始めるわけだ。内心、
 (トーシローめ、目にモノを見せてくれるわい)
 くらいのことを想っていたのだろう。
 「どうせ公式を覚えさせるだけの目的なら、それを陰気にやるよりも、面白おかしくやればいい。僕らの中学(旧制)時代を考えたって、やはり忘れ難い先生というのは、そういうへんなことをやってくれた先生ですよ。僕は中学時代「蒙古」って渾名だったんだけど、例えば代数の時間にね、Xの入っている式の計算法の授業で、先生が『未知項は左へ。既知項は右へ。八公は長屋へ。小沢は蒙古へ』なんてギャグを飛ばす。みんなどっと沸くわけね。そうやって生徒を適当にダシにしながら、教えてくれた内容というのはやはり忘れられないし、面白い先生だったな、と思いますね」
 「いまだったらそんなことやったら問題になるかもしれないけど、宿題忘れた生徒のお尻に、コンパスの針の先にメンソレータムを塗って、はじからちょっとさしていく。みんなが痛い痛いと言うと、『大丈夫だよ。メンソレ塗ってあるから』って。そういうへんなことやった先生はやっぱり人気がありましたよ。ありきたりじゃ、なかなか生徒はついていかないの」
 当時、タレント講師とか呼ばれたけど、今ではカリスマ講師とかいうことになっちゃう。この文章が書かれる数年前、俺が御茶ノ水の予備校に通っていた時に覚えているのは、元東大の全共闘代表で、物理担当だった山本義隆と、マッカーサーの通訳をしたと自ら言い放っていた、異形のジイサンくらいのものだ。

文法の講師だったオッチャンは、姿形はDouglas MacArthurのコピーみたいだったな。

 通っている頃には、まだ、駿河台下の郵便局で、小さな包みが爆発した事件があった。山本義隆が関係しているのではないかという噂は誰もしなかったけれど、あの時代には、まだそういう政治の残り滓が、よく見ると街の隅に残っていたものだ。
 「仏教の方のお説教でも、ここぞ、というときに、おばあちゃんたちが全員そろって、『南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏』とやる。これ、受け念仏というんですが、積極者が、ここぞというときにヤマをかけて音吐朗々盛り上げると、聞いているほうも『わかった』『有難い』『感激!』というあいずに、一斉に『南無阿弥陀仏』と大合唱をやるんです」
 「生徒に受けたとか、お客に受けたとかいうあの『受ける』という言葉は、どうもそのお説教の『受け念仏』から来てるんじゃないかと僕は思ってるんだけど、この受け念仏がいいか悪いかで、説教者の話はまた盛り上がりが違ってくる。受け念仏が悪ければ、説教者もいい説教ができないわけです」
 その点、マッカーサーじいさんは、長身で、もう足が悪いのだが、常にサスペンダーでズボンを吊るして歩いていた。喋りは、ハーフみたいな胸を震わせるような発声をした。スカしていたがヨボヨボだった。今の時代には信じ難いような気もするが、毎朝毎晩、ハイヤーで送り迎えをされていた。堂々と、予備校校舎の真ん前に横付けした黒塗りのハイヤーに乗り込んで消えた。彼自身の放つ異形のオーラが、青臭い受験生には「受けた」ということだろう。


追記
昨日はミソカツ喰ってまいったにゃー。
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