岡田純良帝國小倉日記

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芸談(上)――話は「先手必勝」。
12月27日
芸談――年末にちょっといい話(上)
「背中まるめて 『小沢昭一的こころ』のこころ」[小沢昭一著, 新潮文庫]
 先月末、絶版文庫本を八重洲某所で入手した。50代半ばの芸談がとてもよかったので、少しその部分を引用したい。
 次なる文章は、「広告批評」の1985年(昭和60年)5月号掲載の一文、「話のはなし」である。副題には「いま、予備校の先生がオモシロイと聞いて」とある。代々木ゼミナールなどで金ピカ先生の佐藤忠志などが有名になり始めた時代だったのではなかろうか。
 「ひと前での話というのは結局、先手を取るってことが大事だろうと思います。相手が聞きたいことをただズルズルと言ったんでは先手が取れない。相手が聞きたいときには聞きたいことをなるべく言わない。そうすると、聞き手は、なんとか言葉の端々からそれを聞きとろう、つかみとろうと、緊張するわけです。そうさせておいて、しかしそれだけだと向こうもあきちゃうわけで、ほどほどのタイミングで聞きたいこともちょろっと出す。相手はまた乗ってきて、もう一つ出てくるだろうって期待する……そのへんは、大道のあきない、テキヤさんの商売の仕方と非常に似てますね」

今村昌平の「楢山節考」より。倍賞美津子と。

 「商売人は、いかに、人の関心をひきつけて引っぱっていくか、ということに関して、生き死にがかかってくる。政治家もテキヤさんも、そのへんは同じことなんじゃないでしょうか。そういう一瞬のダレ場も許されないというイミでは、芸人のほうがひょっとすると遅れていたりしますね。学校の先生という商売も、当然弁舌で人を引きつけていかなきゃいけないんだけど、なかなかうまい人とそうでない人がいる」
 芸人・小沢昭一はいきなりツカミで大道芸の芸人の蛇遣いの話をかます。
 「もう一つ、声ですね。どういったらいいでしょうか、あえて言えば、ある異様さ。ちょっとエキセントリックなものがあったほうがいい。実際、往々にして弁舌で鍛えてきた人の声というのは、元首相もそうだし、ずうっと前の首相も喉頭ガンで亡くなられたくらい喉を使いましたから、みんな、あの声になる。テキヤさんが商売しながら野風にさらされてああいう声になってきたのと同じですね」
 「お経も発声の仕方は浪花節と似てるでしょ。お経を聞いていると眠くなるというのは、あれは耳に心地よいからで、どうも日本列島では、神の声、仏の声とうのがあれらしい。あるいは悪魔のささやきもこの声かもしれない。押しつぶしたダミ声。あの声が持つ一種の呪術力というかな、そういうものがあるような気がする」
 「それからもう一つは、話の運びのトリック。トリックというとなんとなく、だます、たぶらかすというようなことにも通じるけれど、しかしやっぱり、説得する場合には、そういう要素もなければなかなか相手を乗せることはできない」
 この後に続くのが、テキヤの大道での具体的なバイ(商売)の説明になる。
 「蛇が鳴くぞ」→客:人垣をかき分けると、蛇が頭にこよりの輪を乗せてハチ巻きをしている(なんだこれ!)→「これまで、私はずっと蛇をつかまえて歩いていた人間だ」→ぢ許の袋がピクピクと動いている→「この中にはハブが入っています」(ハチ巻の蛇はそれまでに隠している)→「ハブは怖い」「噛まれると怖い」→「これから、一度、ハブに噛ませてみる」→┻辧(あんなこと言ってても、何か売るんだろう)→頃合を見計らい先手を取り、毒の無い蛇に噛ませて血を流す→「私は大丈夫。薬を持っているからすぐ止められる」→「今日は薬を少し持ってる。商売じゃないんだから、二缶か三缶、自分のために持っているだけなんだから」→「欲しい人、手を挙げて」→客:限定だと言うので猛烈に手を挙げる→「形だけ、印に○○○だけ出して貰えばその方たちにだけ差し上げましょう」→客:どんどん金を出している
 全体の流れもよく練れていて感心するが、特に、を繰りだす時のタイミングが難しいわけなのだろう。そういえば、昔のテキヤはこのような一種の馴れ馴れしさがあって、取り巻く客の方にも、共犯者的な馴れ馴れしさがあったと想う。この項、明日も続く。


追記
江戸は3度。これから出立。
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竹内均教授について タイプではない。どちらかというと秀才、努力型の泥臭い、勤勉なタイプである。 東大退官後は、雑誌『ニュートン』の編集長、代々木ゼミナール札幌校校長、などおもしろい経歴をたどった。さだまさしの深夜放送に出たり、スーパー歌舞伎にも出ようと
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