岡田純良帝國小倉日記

<< キミはビーフか?、ボクはやなぁ、ボクなぁ、ボク、ビ、ビ、ビーフや。 | main | 20世紀の源氏物語――昭和の女優の恋(下)。 >>
20世紀の源氏物語――昭和の女優の恋(中)。
4月17日
ニッポン人の自叙伝は、女傑に軍配上がるモノ――扇千景に続いて有馬稲子名調子(中)。
 結局、4月14日の「私の履歴書」は、前日のウキウキと打って変わり、暗い色調になった。
 「監督からは、思い出したように電話がかかってきた。こちらはただ待つばかり。連絡は絶対してはいけないといわれていた。受身の恋は2カ月は我慢できても3カ月はだめだった」
 この緩急の付け方、あるいは、起承転結のフォルテシモは、女優の旨さだ。短い文章を積み重ねてあるが、キツイ言葉も潜んでいる。
 「芝田村町の電話ボックス、外を何度も都電が走り去った。長い時間待たされてようやく電話に出た彼が、何の感情もない言葉で言った。『今日、子どもが生まれてね。子どもさえくれたら別れてやると、ワイフが言うんだよ』。別居していると聞かされていた、それが子どもまでできるなんて。雨が降っていた。重い電話ボックスのドアを開けて私は町に転がり出た」
 不倫相手の監督は、先年亡くなっている。
 この辛い電話の直後、有馬稲子は萬屋錦之介と雑誌の対談で「出会う」ことになる。その後で、結婚を前提とした付き合いとなり、身内や親戚に紹介されることになった。彼女は、揺れる自分の気持ちを正直に監督にぶつけたが、梨園の人との結婚など無理だと言って、監督に大反対されることになる。
 「私は盲腸になった。手遅れ気味で手術は4時間もかかった。なんとその夜、とつぜん監督が病室に現れた。手術でボーッとしている私の枕もとで、こともあろうに錦之介さんとの結婚を思い止まるようにかき口説きはじめたのだ」
 (本当なのだろうか)
 俺はここで思わず考え込んでしまった。
 有馬稲子は、その監督の子を宿し、ショックで流産をしたという説と、堕胎させられたという設と、2つの説が昔から囁かれていた。このゴシップは、古くは、「噂の真相」辺りで書かれたこともある。
 「そのとき廊下の向こうから大きな声と数人の足音が聞こえた。『おーい、みつこ、どこだ』。みつこは私の本名、錦ちゃんの声である」
 「とたんに監督はレインコートをかぶると暗い隅にしゃがみこんだ。鉢合わせというには、あまりにもまずいタイミング。錦ちゃんが監督を見つけるとどうなる、殴り合いにでもなるのだろうか。私は目をつぶるしかなかった」
 女優となる者は、こういう劇的な場面に居合わせる運命にあるものなのか。実際、晩年までレインコート姿が有名だった監督の、これまた、妙にオドオドとした情け無い間男のような風情が、こちらの脳裏に鮮やかに浮かんだ。
 「『あのなあ、盲腸なんか病気じゃないんだよ、頑張れよ』。それだけ言うと、また錦ちゃんは元気いっぱい出ていった」
 男のオーラが違う。これはキツイ。
 この場で彼女は決心したということだろう。これまで、映画監督と付き合ったインテリ志向の女優が、なぜ萬屋錦之介と結婚をするようになったかという疑念は、この一場面ですっかり雲散し、長年のこちらのわだかまりは氷解した。いやはや。
            有馬稲子◆

追記
小倉の里ではみぞれだぜ。41年ぶりの雪だって。参ったぜ。甲州笛吹川に突撃せんとなぁ。わしゃ、黒駒勝蔵と一戦交えんとあかんぜ。
ともかく、諸兄姐よ、先週の日本経済新聞は、毎朝、ドキドキでしたぜ、俺ぁ。ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ。
| 4映像 | 06:28 | comments(0) | trackbacks(1)
スポンサーサイト
| - | 06:28 | - | -
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://punkhermit.jugem.cc/trackback/3224
トラックバック
日経 有馬稲子
最近、興味のあることはやはり、この情報に関してです 。有馬稲子/ゼロの焦点..... 送料無料!!【DVD】東京暮色/有馬稲子 アリマ イネコ..... 20世紀の源氏物語--昭和の女優の恋( 4月17日 ニッポン人の自叙伝は、女傑に軍配上がるモノ--扇千景に続いて有馬稲子名調子(
| 海鮮好み焼き | 2010/04/23 8:33 PM |
CALENDAR
S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< October 2017 >>
SPONSORED LINKS
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
モバイル
qrcode
LINKS
PROFILE