岡田純良帝國小倉日記

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三島と司馬、そして荻窪文士村。
11月23日
「司馬遼太郎が発見した日本『街道をゆく』を読み解く」[松本健一著, 朝日新聞社, 2006]
 松本健一は、三島由紀夫の自決が司馬遼太郎に与えた影響について「週刊文春」では次のように指摘する。本書を貫く視座でもあり、引用する。

 「『週刊朝日』に連載を始めた時期を見たら、1971年1月1日号。前年の11月25日に、三島が自決を図っているんですが、その翌日に温和な司馬さんが強い調子の三島批判を新聞紙上に書いている」

 これは事件翌日、司馬遼太郎が毎日新聞に「異常な三島事件に接して」という小文を寄稿したことを指している。司馬は「本来、自分の想念の中に閉じ込めておくべきことを彼は現実にやってのけた」と痛烈に批判した。1923年生まれの司馬遼太郎は臨時招集で満洲に渡り少尉で終戦を迎える。僅か2年年下でも、召集検査で肺浸潤と誤診されて即日帰郷となった人物への大いなる皮肉でもあったろう。
 この辺りの2人の機微についてはもうあまり興味は無い。岡田家が少なくとも200年は住み続けている「肥薩の道」を歩いた司馬の言葉を松本がどう読んだかが気になっている。
「作家が死ぬと時代が変わる――戦後日本と雑誌ジャーナリズム」[粕谷一希著, 日本経済新聞社, 2006]
 「中央公論」編集長を経て、現在の都市出版の前身で「東京人」、「外交フォーラム」を創刊から担当した編集者(http://www.speakman.co.jp/1/kasuya-kazuki.html)の回顧録である。こちらも、偶然、三島由紀夫の自決後に、司馬遼太郎が「文藝春秋」で「この国のかたち」の連載を始めたという話を、「文士が国士になった」と言い表しているそうだ。なるほど。これは言い得て妙だが、書評を見る限りとりたてて新しい光は当たっていないようだ。
 こちらは粕谷一希と「東京人」の編集部にいた若き日の坪内祐三の関係を色々と想像してしまった。というのも、当方は「外交フォーラム」は永年の定期購読者で、毎回「東京人」の特集は北京にあっても必ずチェックするくらいの同社の雑誌の熱心な読者だからだ。
 例えば今月の「東京人」は中央線沿線特集で気になっている。井伏鱒二の「荻窪風土記」を愛読していたので、「阿佐ヶ谷将棋会」などはひどく懐かしい。変人の外村繁に太宰治、亀井勝一郎に加え、木山捷平、上林暁などが後に加わっている。阿佐ヶ谷駅北口の中華料理店「ピノチオ」(現在の西友の対面辺にあったという)を根城に、投了すれば飯を喰い、酒を飲んだ。
 店主の“佐藤さん”は、今なら気取って「ヴィノッキオ」とでも名付けるか。中野の中島健蔵とか川崎の河上徹太郎まで加わる一大勢力の「阿佐ヶ谷会」に昇格する前、1940年頃の井伏鱒二は今の当方と同年齢。太宰治はまだ30歳位だ。
 文学史的には太宰にとって井伏は師匠ということになるが、各々作品から判断する限り、2人は結びつかない。だから「荻窪風土記」を読むまでは、人も水と油の感じがあった。
 それでも、目線を荻窪の井伏邸に置いて、群像の中に2人を置くなら、その結びつきも判るような気になった。中央線に飛び乗れば、甲府まではそれほど遠くはない。太宰が井伏を追って甲府に引っ込んで「富嶽百景」を書いたり、情死後には、井伏鱒二が石碑を建ててやったりしたことも理解できる。
              井伏鱒二by中島健蔵。
 各々が書いた作品からではなく、井伏鱒二の荻窪という地勢から交友を見据えるならば、見えなかったものも見えてくることを「荻窪風土記」は教えてくれる。
 1980年代の半ば、まだ阿佐ヶ谷の北口商店街はアーケードで塞がれる前で、特に入り口左側にはバラックっぽい雰囲気が濃厚に残っていた。

 「この中に父親が通ったバラックのバーがあるの」
 「それで」
 「ママが品のいいお婆さんなのよ」

 高円寺南口、今の「パル商店街」近くで生まれ育った人に教えて貰ったことがあったっけ。ちょっと残る話だった。


追記
さて、旅。アホラシ。しかし、旅がないと生きてゆけないのも現実でっせ。さらば。
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