岡田純良帝國小倉日記

気になる本――言霊と政治。
9月23日
気になる本――言霊と政治。
 「さまよう民主主義」[Steve Richards著 / 高崎拓哉訳, ハーパーコリンズ・ジャパン]
 数日前のDonald Trump(1946年-)とアメリカ国民との関係にも絡む話でもあるわけだが、こちらはヨーロッパ。評者は言う。
 「欧米におけるアウトサイダーの躍進は、2016年の英国における欧州連合(EU)離脱の国民投票と米大統領選におけるトランプ氏当選でクライマックスを迎えた。はじめ、多くの識者はその躍進を反エリート主義の台頭としてしか説明できず、途方に暮れるばかりだったが、次第に、どこにアウトサイダーの台頭を可能にする要素があったのかを突き止めようとする試みがでてきた。本書はその試みの系譜に位置付けられる」

       「さまよう民主主義」表紙。.jpg

 著者のSteve Richards(1960年-)はイギリスでも有名な政治評論家だが、なぜ人気があるかというと、正論を平易な言葉で語ることができるからだ。評者も語る。
 「権力に懐疑的なメディアが政治家を萎縮させ、既存政党は支持層に気兼ねしてしまう。その結果、エリートの政治家は問題を正面から語ることを避け、曖昧な言葉に終始する。かと思えば、人びとの気持ちに寄り添っていない言葉を軽々に発してしまう。政策の観点からも、コミュニケーションの観点からも、既存政党が責められるべき点は多い」
 「そこで本書は重要な教訓を提起する。メインストリームが萎縮したからこそ、アウトサイダーが入り込んできたのだと。人びとはなぜ、自分たちが選んだ政治家に不寛容で、すぐに引きずりおろそうとするのか。困難な課題が待ち受ける中で、万能な指導者など存在しない。政治家はいま一度、自らの政策とイデオロギーを見つめ直し、人びとに届く説明をすることが求められているのだと」
 近年の日本では幸い、安倍政権では、防衛面やエネルギー面での安全保障、憲法改正についてオープンな議論のスタンスがあった。野党はこの議論にまだついていけていない。そこに保守政党の強みがあるのも極東の政情が極めて不安的になっているから。変化の時代に野党は身の丈を合わせる実力が無い。そこに安倍晋三の入り込んだ背景がある。
 中学生の頃に気付いたことだが、与党だけでなく、野党でも、日本の政治家は、政官の間だけで通用する政界用語と節回しを多用して、一般人に理解できるような言葉遣いをしていない。バカか目くらましで言っているかのどちらかだ。
 世間でしのぐようになってからは、役所の資料も、企業の内部資料も、同じく、読者に結論を先に言わず、簡単に理解し難い理屈からベタベタに入るような論理構成になっている。責任を避けようとする根性が難解な文章を書かせることは、体験的に知った。

         Steve Richards Rock and Roll Politics.jpg

 アメリカには堕ちた者にチャンスをもう一度やれ、という美徳がある。過ちを犯しても、罪を償ったら、もう一度挑戦する機会を与えようというものだ。敗者復活ありの前提だから言葉は強い意図を持って明瞭に発せられる。それがアメリカ流の民主主義であった。
 2016年の大統領選挙の争点はあまりにも幼稚な課題に焦点が絞られてしまい、有権者の大多数は戸惑いの中で投票日を迎えてしまったわけだ。常々、何がアメリカの課題か、共和党や民主党の政治家たちは、サイレント・マジョリティーの耳に届くような言葉を発していなかった。そこをTrumpは衝き、有権者の間に怒りになって拡がって行った。
 しかし、有権者の側にも、もっと我慢があっても良かった。俺などは政治とは「妥協」と同意と想う方だが、要は、利害の調整は最も難しい駆け引きと理解されるべきだろう。
 政治に言霊が復活しなければ、王道は廃れる。英語ならStatesmanshipの復権だろう。世界的に保革共に言霊を喪って政治に庶民は背を向けるようになった。入り込んできたものは誰か。この20年の国際政治で誰が王朝を築いてきたか。空々しい言葉はもう沢山、そう感じた大衆心理に誰が付け込んだのか。今、気の毒なほど陽気なアメリカ人たちは自己嫌悪に陥っている。注意すべきなのはあの男。その怪物化を助長し加速させたのはこちらの気の緩みであったはず。(国際政治学者・東京大講師・三浦瑠麗評、讀賣新聞)


追記
我が家ではこの数日のアメリカのRod Rosenstein(1965年-)司法副長官絡みのスキャンダルで持ちきりだ。
コイツは21世紀の怪事件だぜ。NYTとPostの威信を賭けた調査競争が始まるのか、それとも、2013年にNYTは陳光標に買収されかかったし、同じ年、PostはJeff Bezos(1964年-)に買収されちまっている。日経がこれに慌ててFinancial Timesを買収した訳だが、この一件で、骨抜きのチンピラの集まりになったことを天下に晒すのかどうか。さて、この件は、渦中の人物のそのリスクを取った真意がまだまだ分からない。White Horseなのか、はたまた誰かの回し者か。映画になったなら最高に面白い一作が撮れそうだ。

追記の追記
Keith Richards(1943年-)とSteve Jones(1955年-)を足して二で割ったようなお名前の著者ですらい。
その伝では、小松左京(1931-2011年)は、荒俣宏と宮崎駿と吉本隆明を足した存在だという例えがあるそうだわいね。小松は、晩年、阪神淡路大震災の後、鬱病で苦しんだ。昭和の同級生であった開高健(1930-89年)が、惨事を知らずに消えたことを考えると、中々複雑な感じがある。
| 9本・記録集 | 07:25 | comments(0) | trackbacks(0)
銀鱈西京焼バラバラ事件発生。
9月22日
銀鱈西京焼バラバラ事件発生。
 諸兄姐、酸鼻的な事件やで。見てみい、こら、アカンわ。
 「テリイ、焼けたよ」
 アクビ娘に声をかけられ、いそいそと皿を持ってグリルの前まで行く。
 「さいばしわたすから自分で取り分けて」
 「うん」
 そして起きたバラバラ事件。

20180915 銀ダラ西京漬け.jpg

 銀鱈ちゃん、こないにバラバラになってもうて、アクビ娘に泣いて詫びてもバラバラはバラバラやねん。
 「笑っちゃうよ」
 家に居ると、どーも、調子が出えへんねん。そやけえこないなことになるねんな。
 ブツクサ言うとったら、さっき、ヤーな音がして、出てみたら、や。
 (あ?)
 呼び出しやんけ。やなこった。明日は外出や――それならそれで、ヤな感じやねえ。

「Balla Balla&ダンス天国」シングルジャケット.jpg

 俺にはThe Rainbowsの「My Baby Baby Balla Balla」よりもスパイダースの「バラバラ」だったりするんだけれど。

「Balla Balla」[The Rainbows]シングルジャケット。.jpg

 イギリスにもう2年位も長くいたら、オランダ、(旧西)ドイツのビートバンドの音源を集めたんだろうなぁと想う。スパイダースはロンドンに行って、西ドイツのビート・バンドのシングルなんか、買い漁っていたわけだろう。
 バンドマンなんてのは、何時の時代でも、考えることは同じだよな。
 お皿を眺めて想うのやけど、迷走する断末魔の戦艦みたいやねえ。気の毒やなあ、銀鱈ちゃん。銀鱈はどこ産や?言うて、ボク、知らん。
 ココロがバラバラになりそうやねん。そうや、ボク、ココロのオヤビン、ココロで泣いて、ココロで笑うねん。ヌーン。
| 5今週の余糞 | 19:35 | comments(0) | trackbacks(0)
死ぬまで役人――どうしてそこまでやるのか(下)。
9月22日
死ぬまで役人――どうしてそこまでやるのか(下)。
 昨日からの続きになる。21世紀でも、コンサルタントになった元役人は、辞めた後でも根性は役人というわけだ。それほどロイヤリティーが強いのはどうしてか。特にノーパンしゃぶしゃぶじゃないけれど、財務省の高官が時の総理の気持ちを「忖度」までして堕ちた財務省の地位を高めたかった理由が――ヤング・フレンズには理解できないのだろう。
 確かに安倍内閣では素人目に観てもここ数年は経済産業省の天下が続いていた。だから、財務省、昔でいうなら大蔵省の影響力がすっかり地に落ちて薄くなっていたことを昔日を知る人には直ぐに理解できるが、知らなければ分からないだろうと想うわけだ。

      福田赳夫と大平正芳。.jpg

 ヤング・フレンズは今の財務省のなりふり構わないやり方を理解できないのは、役人の価値観と思考回路が理解できないのではなく、なぜ財務省のトップまでがそこまで必死になって失地回復を図ろうとしているのか分からないのだろう。それほど、財務省は今では目立たなくなってしまっている。金融なら黒田東彦(1944年-)総裁ばかり目立っている。
 大蔵省は日本の社会と日本人全員を睥睨していた時代がかつてはあった。当時の勢いを振り返る逸話はザクザクとゴミのように出てくる。
 梶山季之(1930-75年)の言葉を借りてみよう。
 「文部省の某局長が、予算をとるために、自分の子供のような主計官の肩をもんでサービスしたとか、文部大臣が暖房のない主計局の廊下に六時間も待たされたとか……エピソードは限りなくある」
 梶山の語る大蔵省で本流の主計局を歩んだ福田赳夫(1905-95年)の話を引く。満州事件の時には大蔵省の主計官であった。
 「専用機で善戦視察に招かれたことがあった。その帰途、関東軍参謀長だった東条英機が、朝鮮の平壌に用事があるとかで、専用機に乗せてくれないか、と泣きついてきた。
 そのとき福田主計官は、
 『平壌へは立ち寄れないが、京城には寄る予定だから乗せてやろう。あとは汽車で行け』
 といって同乗させてやったという」
 「樺太の部隊を視察に行った時には、専用車両を仕立てて、馬の放牧が見たいと言えば原野の真ん中で列車をとめ、事前に手配しておいた馬の交尾までお目にかけた」

        福田赳夫と王貞治。.jpg

 「釣りが好きだと聞くと、鉄橋の真ん中で列車を止め、汽車の窓から釣り糸を垂れさせたそうだ……」
 「これは福田赳夫氏自身が語っているから、嘘ではあるまいが、当時、飛ぶ鳥おとす勢いだった陸軍ですら、大蔵省の予算編成権限には、かくも低姿勢であった。ましてや今後の各官庁は、推して知るべしであろう」
 今は知らず、少なくとも俺の知る限りでは、20世紀までの主計局長は指定職九号俸で、他の局長が普通なら七号俸であることに引き比べて、明らかに高かった。それでも当時は誰もその不公平を質そうとする人はいなかったわけだ。
 今では大蔵省が予算をどう配分するかということよりも、将来、間違いなく縮んでいく国庫の中身の運用と、「円」の通貨としての影響力をどう維持していくか、先々を見据えた知恵の方が必要とされている。
 国が衰運に向かっている時、割り付けの才覚ではなく、まだ見えない大きなビジョンが見える才覚が必要とされる。日銀総裁の黒田東彦は、前職は東アジア銀行総裁であったが、この人物は、かつてのEU統合論者と同じようにアジアは共通通貨論者でもある。


追記
昨日は久し振りに八重洲方面。
静かに思いで話で始まったと想ったら、広島カープのマジック点灯話に触れた途端に球団経営者の月旦に展開して、急激にボルテージが上がった。国鉄とか西鉄とか阪急とか東急とか。西に東に飛び、それから古今のサッカーのプロ球団の立地と売買と変遷の話に雪崩れ込んだ。球団経営は人気商売だけに無類の血潮を必要としそうだわいねえ。
ヌーン。

追記の追記
なぜかまたまた出撃でっか?
| 10随想 | 06:10 | comments(0) | trackbacks(0)
焼酎時代再来――向付けで水割り。
9月20日
焼酎時代再来――向付けで水割り。
 先日、久しぶりの何も予定の無い休みになったので、家でゴロゴロ寝ていたら、呼び出しが掛かった。休んでいる人間に呼び出しをかけるとは、311以来で、しかも有事ではないのに何事か。
 結局、何のこともないのだ。俺のような有事専用の人員など馳せ参じるような緊急の話ではなかったのだ。
 「なーんだ、んぢゃ、呑みに行きましょうや」
 というわけで、ちょっと景色のいい場所まで上がって呑んだ。
 (おっ!)
 焼酎は黒糖焼酎が数種類ある。それもいいのだが、お店が出しているぐい呑みの形がいい。

古伊万里若松向付け(明治前期) (4).jpg

 ぶっかき氷を入れて、景気良く焼酎を注いでも、台付きは安定していて全く問題が無い。
 「いいですね、これ」
 「これは向付けだからホントは呑むためのものじゃないんですよ」
 「ううん、これ、譲ってくれませんか」
 「伊万里ですけど、明治前期の大したものじゃありませんし」
 「それなら是非」
 酔った勢いもあって、こうして家にやって来た。
 柄は若松なんだって。松の新芽ですね。若い絵柄がおっさんの家にやって来ました。
 蛇の目のグイ呑みに毛の生えたような安物だけど、形と大きさが落ち着いてて、酒を度々継ぎ足す必要が無い。ウッフッフッフ、だから、俺のような飲み助を安心立命の心地にさせてくれるわけ。分かるかなぁ。


追記
雨で煙る関東。気圧も低くて気持ちまで何だか暗くなっちゃうねえ。ボヨヨーン。そうそう、アナログ・プレーヤー発注するぞ〜っ!
| 7喰う | 16:21 | comments(0) | trackbacks(0)
死ぬまで役人――どうしてそこまでやるのか(上)。
9月21日
死ぬまで役人――どうしてそこまでやるのか(上)。
 50代まで日本社会でしのいで来て、何となく分かったことがある。男女老若を問わずに人材の流動性を上げないと、日本の国勢は回復しないということで、これは確信に近い。ずっと言い続けているんだけど、日本ではどうなんだろうなと想っていたら。

        不倶戴天の敵、吉田茂vs芦田均.jpg
 同じ外務省だって政界に出るとこうして不倶戴天の敵になる。上に行けば行く程に競争は
 熾烈になるわけですわなあ。傍目にはお互いに蛇蝎のように嫌い合うのはガキの喧嘩だ。

 ところが、先日、財務省幹部がどうしてあれほど「忖度」したかということを書いたら、ヤング・フレンズ(新出 by ヤング・フレンズ from 香港)から、財務省の幹部が知事にまで「首相案件です」とまで言って圧力をかけた理由が分からないと問い合わせを受けた。
 「そんなに省庁間の競争が激しいのが分からないんですけど」
 行き付くところ、それが分からないから、高級役人が他省との権勢争いや競争のために、あたら役人生命をかけて消えていくのか、そこまでやる必然性が分からないというわけ。
 ということは、ヤング・フレンズの間では生涯雇用の感覚が薄れているということかと安堵したりもするが、必ずしもそうでもないらしい。

昭電疑獄 (2).jpg
 昭電疑獄でパクられた人へ同業の要路の人々からの差し入れの数々はどうよ。今こんな
 差し入れをしたら芋蔓式に叩かれる。昨日も某所で話になったのは、メディアが余りに
 トロくなって正論を吐けるほど社会の仕組みを分かっているヤツがいない慨嘆だった。

 例えば赤門を卒業して某省の役人になり、国費で留学して一通り役所の業務を経験して、近頃ではグローバル・ネットワークを持つコンサル会社に転職し、コンサルタントになるコースが一つの生き方になっている。俺にもそんなヤング・フレンズもいたりするわけよ。
 彼らは今では役人じゃないのに、出身の役所には義理を通し、世話になった先輩には、今でも頭が上がらない。可愛らしいけど、その先輩と仲がいいと知ると、相手が俺でさえ態度が豹変するのはヌーンであったりするわけだ。「ヌーン=役人根性?」と取って頂いて結構よ。オホホホホホ。
 そこで想い出すのは「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」だ。俺がNew Yorkで身を削って地を這い回っている頃の事件で、だから俺は関係ない。ここでまず言っとくけどよ。呵呵。

        昭電疑獄 (1).jpg
  主計局長でパクられて、副総理とこういう態度で話ができるわけだから、さすがに
  九号俸を毎月受けておるだけあるわいねえ。大物だよね。

 これは実際、ノーパンしゃぶしゃぶで饗応に預かっていた大蔵省の役人が逮捕された。世に言う「大蔵省接待汚職事件」である。3人自殺者が出て、大蔵大臣と大蔵事務次官が辞職、OB含む大蔵省の役人が5名、日銀からも1名逮捕者が出た。
 この時、東京地検特捜部は、都銀、長銀、証券3社から業務日誌や接待伝票を押収してさらに追加で逮捕者が出る噂話もあった。接待伝票に「ノーパンしゃぶしゃぶ」屋があって、面白おかしく報道されて言葉は一人歩きした。
 当時、証券・銀行には「MOF(Ministry of Finance)担当=通称MOF担」が専門の部署がある、という解説報道があり、その「MOF担」という言葉まで話題になった。大蔵省専門の渉外担当で、役人にどう喰い込んで情報を取るか、同業者の間で競い合っていた、というものだ。
 事件は道路公団の外債発行で幹事会社の選定に絡む営業合戦で、野村証券の過剰接待が事件の核心にある。それほど大蔵省の影響力は大きく、野村証券の営業は押しが強かった。報道された時、東京で誘われたことがあったことを想い出してNew Yorkで震えたものだ。俺に喰い込もうとしていたヤツは、今、○○で○○○○の専務をやっている。

追記
雨で煙る関東の朝。グッと気温は下がってきましたなあ。これからまたまた小さな旅。
外にばかり目が向いていた二十余年。ところが、今度は関東各地がボロボロに寂れていることを、各駅停車の旅で否応無く目の前に突きつけられる。兵糧が尽きて振り向いた時には、懐かしい山河が変わり果てていたという感じがある。

追記の追記
安っぽいヒューマニズムと歯の浮くようなおべんちゃらで総裁選が終わり、月末の首脳会談。有権者に蜜月だと訴えるべき相方を、官邸は読み間違っているようにも感じる。喧嘩しても何もいいことは無いけど、すり寄って行って効果のある相手とそうでない相手を考えないと、時間まで無駄にしかねない。
| 9本・記録集 | 05:43 | comments(0) | trackbacks(0)
気になる本――本を読まない人は世に半分いる。
9月20日
気になる本――本を読まない人は世に半分いる。
 「共謀 トランプとロシアをつなぐ黒い人脈とカネ」[Luke Harding著 / 高取芳彦・米津篤八・井上大剛訳, 岩波新書]
 某ビルの地下にある飲み屋でのこと。
 「あの人たちはまだ元気みたいだな」
 「元気、元気、大元気」
 「佐藤○は分かってないよ」
 「そうですか」
 「あんなに元気なのに、把握できていないだろう」
 「地域が違うと興味無いんでしょうね」
 「だから官僚は頼りにならないんだよ」
 この人は70年代から、キューバ、グルジア(当時)、チェコスロバキア(当時)等の共産圏でショーバイを続けてきた人だ。
 「トランプでアメリカは大ミソを付けたぜ」
 「そうですねえ」

          「共謀 トランプとロシアをつなぐ黒い人脈とカネ」表紙。.jpg

 トランプとロシアの癒着に関する情報がネットで公開されたのは2017年初頭。
 ・ロシアは5年前からトランプを攻略して事業を支援してきた
 ・ロシア諜報機関筋によると、ロシア連邦保安庁はトランプのモスクワでの行動を通じ、
  トランプを恐喝できるだけの弱みを握っている
 といった内容だった。その頃、俺はまだLondonにいたわけだ。
 「アイツは“Golden Shower Boy”だっていうじゃんか」
 「そうらしいなあ。モスクワの高級ホテルで盗撮されたビデオもあるそうだぜ」
 「ソレを呑んだとかいう話もあるそうだなあ」
 LondonのPubで人々はそんな与太を飛ばしていた。まだアメリカ大統領に就任してはいなかったから、彼の就任を阻む最後の抵抗勢力の一撃だと想っていた。あの頃までは、Donald Trump(1946年-)は大統領に就任しないのではないかと何となく誰しもが感じていて、下ネタの決定打が出たと俺たちは騒ぎまくっていたのだ。
 「これってDennis Hopperの主演した『The American Way』のリアル版だねえ」
 「こんな時代が来るなんて、誰も想わなかったよ」
 「だけど現実世界では大統領選は終わっちまったからアイツは当選しちまった」
 「俺達にはCaptainもいないぜ」 
 その頃、著者は「Guardian」のモスクワ支局長。

        Luke Harding.jpg

 この重要情報は、2016年中に、情報を握っていたイギリス人元MI6諜報員のChristopher Steele(1964年-)からアメリカの主要メディアに個別にリークされていた。しかし各種の妨害工作にもかかわらず、大統領選では望まれない男が当選した。
 Christopher Steeleは、Donald Trumpのことを英米の両国にとって致命的に安全保障を脅かす存在として捉え、その観点から大統領選の進むアメリカのメディアにリークしたわけである。第1次の当事者であるアメリカのメディアなら、この情報を巧く処理して選挙戦を有利に進められるだろうと考えたのだろう。

          Christopher Steele。.jpg

 その結果、彼ら全員の思惑が外れ、Donald Trumpが大統領に就任したことであった。寒い国の諜報部では社会を上から見ない。正邪の理屈でも見ない。彼らの見立ては金と女と利権が全てで、常にストリートから人を見て、社会を見る。
 過去に何度か○○して連戦連敗、煮え湯を飲まされ、手口をイヤでも知る機会があった。理屈で人は動かない。気付いたらやられている。アメリカでも書籍を読むには有権者の半分しかいない。(インターネットイニシアティブ会長CEO・鈴木幸一評、讀賣新聞)


追記
本日も午後から雨の関東ですが、浮世の御義理で○池方面に。世間は広いようで狭いけど、狭いようで広い。来月の某方面謀議日程、ほぼ決定也。
| 10随想 | 06:06 | comments(0) | trackbacks(0)
処分対象ブツ――1978 Seditionaries GSTQ No Sleeve Shirts。
9月19日
処分対象ブツ――1978 Seditionaries GSTQ No Sleeve Shirts。
 こちらはずっと昔に植田山月さんに撮影して頂いたもの。シンコーの雑誌だとかムックに掲載されたことがある。しかし俺が持っていてもどうなのかなあと最近は想うようにもなってきた。
 好きな人に譲って、もっと光を当てて貰うことの方がシャツも喜ぶかも知れないな、と。

1978 Seditionaries GSTQ No Sleeve Shirts (掲載).jpg

 最後に袖を通したのは30年以上も前のことで、恐らく、もう、20歳の頃には袖を通さなくなったように想う。20歳の頃はもうとっくのとうにパンクが終わったと感じていたからだ。
 ピストルズは消え、その後を儲けている連中がやっておるわいと感じたのが1980年だから、俺にとって、パンクはもう、無茶苦茶短いムーヴメントだった。
 2016年にロンドンであった一連のパンク40周年記念イベントで、ガンコなイギリス人にとっても、パンクとは、1976年に現われた社会現象であり、セックス・ピストルズがパンクの中心だったということを確認できた。
 クラッシュ、ダムドがこのフォロワーで、バズコックス辺りまでが初期のパンクだったという史観でしたわねえ。1976年で完結していて、77年は開花期だけど、ムーブメントとしては拡散期、という風な見立ては、ガンコな俺も、心から共感できるものだった。アハハハハハハ。

1978 Seditionaries GSTQ (Blind Queen)No Sleeve Sgirts .JPG
| 8音楽 | 15:26 | comments(0) | trackbacks(0)
気になる本――「世俗的」も世につれて。
9月19日
気になる本――「世俗的」も世につれて。
 「ライシテから読む現代フランス」[伊達聖伸著, 岩波新書]
 朝日新聞でも取り上げていたので目に付いた。
 「現在も学校など公共空間でのムスリム女性のベール着用をめぐり、フェミニズムや移民差別、植民地主義などと関わる多様な論争が続いている」
 この数年で、フランスの海岸では、毎年夏になると、この観点から、現地の制服警官がベールを外すように指導している写真入りの記事が必ず掲載されるようになった。大抵、指導に従ったかどうか、望遠レンズで引いて撮った連続写真入りの記事になっている。いわば、夏の風物詩のような記事なっている。
 この理由は一理ある。本書には「政治と宗教のいま」という副題が掲げられているのだが、フランスの共和政の成立の歴史を改めて知るいい教材のような気がする。本書の紹介文からしてそういう立て付けになっていることが分かる。
 「数々のテロ事件を受け、フランスはいま、政治と宗教、共生と分断のはざまで揺れている。国内第二の宗教であるイスラームとの関係をめぐり、二〇一七年大統領選挙の主要争点ともなったライシテとは何か。憲法一条が謳う『ライックな(教育などが宗教から独立している、非宗教的な、世俗の)共和国』は何を擁護しうるのか」

          「シャルリとは誰か?人種差別と没落する西欧」[文藝春秋新書]。.jpg
    こちらの本も必読だわね。フランスの今を理解すると欧州全体がかなり理解が
    できるけれど、あくまでもフランスはこれでも他国よりも寛容であると前提を
    おいての話だ。

 讀賣新聞の宮下志朗の評を引く。
 「ライシテ(laicite)とは、『世俗的(非宗教的)であること』、すなわち『政教分離』を意味するフランス語で、共和国を支える理念である。革命でカトリックを国教から外したフランスは、三色旗(共和国)と十字架(キリスト教)がせめぎあう十九世紀を経て、一九○五年に政教分離法を制定した」 
 歴史的にも深く建国の理念と結びついているだけに、時代と共に解釈が変わっていく。
 「もともとライシテは、共和派対カトリックの『二つのフランスの争い』の歴史のなかで発展を遂げ、その争いに調停をもたらす成果をあげたものである。政治的には左派の原理であった」
 1989年のスカーフ事件で、フランスではライシテは移民と結び付けて論じられるようになった。多様性の共存ではなく、現在のようにフランスの共和制の統合に向けた理念として援用されるようになったのである。かつて共和派とカトリックは対立したが、今や「ライシテ」の名の下に糾合され、移民・異文化との統合では彼らはしっかり手を握る。
 昨年の3月に前大統領のFrançois Hollande(1954年-)はFreemasonの300周年式典に出席して、フランスのlaiciteの中核として活動してきた彼らの活動を称えた。
 しかしイスラムの信者が病院に運ばれてきた時に輸血を拒まれたら医者はどうするか。彼らは他の神を認めない。政教分離の議論はない。西欧のロジックでは片付けられない。「ライシテ」も時代につれて意味が変容するのも避けられない。しかも他山の石ではない。(仏文学者・放送大客員教授・宮下志朗評, 讀賣新聞、朝日新聞他、多数)


追記
先日からフレームを探しているのだけれど、中々いいモノがないですなあ。さて、そろそろ。
| 9本・記録集 | 06:10 | comments(0) | trackbacks(0)
処分対象ブツ◆宗1996 Sex Pistols Filthy Lucre Tour Oficial T-Shirts Family Set。
9月18日
処分対象ブツ◆宗1996 Sex Pistols Filthy Lucre Tour Oficial T-Shirts Family Set。
 こちらはそのままズバリ。1996年のピストルズ再結成で、ツアーの行く先で売られていたT-Shirtsだ。Phoenix Festivalの会場で買って、Londonの街を父と娘で歩いてたから、写真を撮られたり、話し掛けられたりした。
 あれからもすでに22年以上の年月が経っているのだから、困っちまうねえ。

1996 Sex Pistols Filthy Lucre Tour (掲載).jpg

 ブツはかなり状態はいいですわね。希少性は無いと想うけれど、父娘で着ていたという点で、娘の方はどうでも、父親の方が棄てられずにこれまできちまったということですわね。
 先日、移動する中央線の車内でこのシャツ着ている男性を見かけた。短髪、総白髪だったけれど、俺よりも若いのじゃないかと想った。

1996 Summer on Sex Pistols Phoenix Festival (掲載).jpg

追記
昔は増税なき財政再建なんて嘘をついて今やその吐いた唾を飲まされとる。わしはそんなことようやらん。そいでから

例外なき小倉処分。
| 8音楽 | 13:52 | comments(0) | trackbacks(0)
気になる本――五○年代は「代理戦争の時代」。
9月18日
気になる本――五○年代は「代理戦争の時代」。
 「一九五〇年代、批評の政治学」[佐藤泉著, 中公叢書]
 敗戦後の言論状況を批判的に見直す時期が到来しているのではないかと予見していたら、批判的にかどうかは別にして、1950年代の批評家とその言論の動向についての興味深い本が出た。
 元々中国文学研究家で、当時はアジア問題に関心を寄せて深く関わったナショナリスト竹内好(1910-77年)、貧乏詩人でありながら毛利の血統を受け継ぐコミュニスト花田清輝(1909-74年)、同じく共産党員で九州炭鉱の恐るべきオルガナイザーであった谷川雁(1923-95年)の3名だ。

       「脈 谷川雁特集」表紙。.jpg

 俺には竹内好は馴染があるが、花田清輝と谷川雁はちょっと肌が合わない。花田清輝は戦前に右翼の黒幕・三浦義一(1898-1971年)の食客の時期があったが、戦後は画然として共産党に入党、アプレ・ゲールの作家群を世に出す役割を結果的に負った。
 谷川雁は西日本新聞をクビになってから北九州の各地のヤマで組合活動を進め、「工作者宣言」で名を挙げた。「大衆に向かっては断乎たる知識人であり、知識人に対しては鋭い大衆である」と書き、詩で「連帯を求めて孤立を恐れず」と叫んで、後の全学連や全共闘に深く影響を与えた天才的なアジテーターでもあった。運動の鎮火と共に後年は反動化し、黒姫山にひっそり暮らしていたが、傍らにっは矢川澄子(1930-2002年)がいたのは生臭い。兄の谷川健一(1921-2013年)に通じる血の濃さを感じる。詩人は嘘吐きで女にモテる。

「昭和2万日の記録 第14巻」108P東大紛争 (掲載1).jpg

 全共闘の挫折の根に「運動はインターナショナルに酔って、ナショナリズムが欠けていたから」という説があるそうだ。今頃気付いてどうする。武者修行の経験の無い坊やたちは死ぬまで坊やなのだろう。金子光晴(1895-1975年)ではないが、誰しもが海を越えたら、依って立つ属性は日本人以外の何物も無い。自ら正統性を拒否しては他者に働きかける活動もヘチマも無い。左腕を突き上げた人たちがそういう人種で日本は助かったわけだ。
 その点、谷川は島原の育ちだけあってか、兄貴と共通するアジア的な土俗の観点で鋭いナショナリズム論を展開した。不逞ヤツである。

        「谷川雁 革命伝説」[松本健一著].jpg

 著者は前書きでこう書いている。
 「六〇年代は『高度成長』の時代と呼ばれ、八〇年代といえば『バブル経済』『ポストモダン』といったキーワードが良くも悪くも付いて回る。だが、五〇年代についてはこの時代を端的に形容する明確なイメージがあるわけではない。イメージ化されざる時代、それが五〇年代だといえようが、だからといって重要な事件が起こらなかったわけではもちろんない。逆に、朝鮮戦争、サンフランシスコ講和条約に始まり、六〇年安保の大規模抗議行動まで、戦後史を語るうえで言い落すわけにはいかない事件、時代を画する事件が引き続いた時代である。むしろそのことが五〇年代を特徴付けていたのではなかっただろうか。五〇年代とは、有り余る出来事のために、一つのイメージを与えることに失敗するほかない時代だったのだ」

「昭和2万日の記録 第14巻」108P東大紛争 (掲載2).jpg

 では、なぜ大きな事件が立て続けに起きたのだろう。
 1950年代は60年安保に向けていろいろな動きがあった。書き出せば1950年の敗戦前の特高警察官の復職・警察予備隊の創設からA級戦犯の釈放、海上警備隊の創設、破防法制定、予備隊の自衛隊への改編、憲法調査会の設置、保守合同・自由民主党の誕生まで。いわゆる人呼んで「逆コース」と言われた保守復権が活発化したのも故無しとしない。
 当時は樺美智子(1937-60年)の死の裏にKGBの影が明滅し、共産革命を夢見る人たちに勢いがあった。保守党と自由党が合同するほど危機感は高まり、誕生した自民党に当初から米政府がCIAの支援を約束していた。アメリカとの安全保障条約発効を巡ってソ連側の妨害工作は激しかった。2つの陣営が激しくぶつかり合う「代理戦争の時代」だった。
 翁長雄志(1950年-)は以前に増して頭髪がカッコよくなってきたが、沖縄県の未来はまだ見えない。南国の不穏な情勢を想い浮かべて彼ら三者三様の遺した文章を読み較べると、なるほど、これは随分面白くなってくるかも知れない。


追記
こういう政府不信とか大企業不信とかいうもので疑心暗鬼にガンジガラメになって、自分が政府に入ったり、自分が大企業に入って、それで何十年も経って、例えば1985年の日航ジャンボ機墜落事故では「撃墜説」に慄いて、あるいはそうかも知れんとか、考えてしまう。現場のリアリティに目もくれず、オメデタクなってしまったのが日本の戦後。そんなオメデタサで若い世代から信用を喪い、つまり、自分自身の幻影に結局は裏切られた――ヌーンという感じがありますわねえ。経済産業省の角の交差点は裁判所からダメだからって言われ、正門真正面に陣取っていた人たちがおりましたけど、そういう人。あるいはそういう人のフォロワー。あるいはそういう人の声に耳を傾ける人。

追記の追記
そろそろこれから涼しくなってきたので行脚の時期ですかいと想うわけ。秘策ありや?ウッフッフッフ。
| 9本・記録集 | 06:40 | comments(0) | trackbacks(0)
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